みなさんこんにちは!ICOを行なった企業が発行するトークンを沢山お持ちの方、試しに購入された方など、いろんな方がいらっしゃると思いますが、そもそもそのトークン、どうしたらいいの?と単純な疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方にICOによって生み出されたトークンについて落ち着いて考えるのにちょうど良い記事がありましたので、ご紹介いたします。
この記事の著者のJaron Lukasiewiczさんは、昨年クラーケンに買収されたCoinsetterのCEOだった方です。
クラーケンはクリプトの両替所としては大手で、日本人の担当者さんもいらっしゃり様々なカンファレンスで登壇されることもあり日本でも有名ですよね。
Original Article : ICO Tokens: A Serious Barrier to User Acquisition?
Posted on Dec 3 by Jaron Lukasiewicz
ユーティリティトークンはすべて狂乱状態の人気ですが、ブロックチェーン企業にとって不気味な失敗材料を作り出しているかもしれません。
テック系をそこそこでもフォローしていれば誰でも、今やICOが人気沸騰中であり、起業家たちがこぞって株式に頼らない巨額の資金調達を、まだそれができるうちにとばかり展開していることにお気づきでしょう。
私は今年、多くのテック企業に助言をしてきましたが、その多くはICO市場で資本調達した企業です。私は、ICO の際に避けられない諸問題について考え抜いているCEOたちのかたわらにいました。近ごろ、トークンの販売をめぐり相反する法的助言について執筆し、米国法に準拠しうる枠組みも提案しています。
本日はブロックチェーン企業がまだ直面していることに気づいていない別の問題に焦点を当ててみました。それではみていきましょう。
「ブロックチェーンプラットフォームのサービスを利用するために顧客が購入しなければならないユーティリティトークンは、ユーザーを獲得するにあたって、克服しがたい壁となる可能性がある」
「聖なる」コンバージョン・ファネルを理解する
最適化されたコンバージョン・ファネル(漏斗)は、オンラインマーケティングの成功にとって不可欠であり、ブロックチェーン企業もその例外ではありません。このファネルの最適化により、ウェブサイト訪問者の足取りを通じて、様々なポイントにおける「漏れ」を発見し排除。訪問者がサイトにとって理想的な行動を取る可能性を高めます。
ICOした企業はいずれ、トークンの所有者からその価値を高めよというプレッシャーを受けることになります。長期的に見ればそれは基盤となるプラットフォームの正当な需要から来ていなければなりません。 残念ながら、トークンがコンバージョン・ファネルに追加されると、ユーザーの獲得をめぐる問題が浮き彫りになってきます。
これをさらに事例化してみましょう。
戦いの火ぶたが切って落とされた:Airbnb対CryptoBNB
あなたが滞在先を探している旅行者であると想像してみてください。 まず「別荘を借りる」でグーグル検索して、AirbnbやVRBO、HomeAwayなど、典型的なサイトを通じて様々な結果をみることができます。また、ZangllとZigllといった新参サイトにも行き当たるでしょう。これらは豊富な資金を持つICOプロジェクトです。ちなみに本記事のために私がでっち上げた企業ですが…。
次のステップとして、あなたはAirbnbといくつかのクリプトBNBサイトにアクセスし、リスト内容を比較します。
Airbnbは数多くのチョイスがあり、クレジットカードによる支払いも可能な洗練されたサイトです。
クリプトBNBは、分散型かつブロックチェーン用語を駆使したサイトで、チョイスは限定的、かつ支払いはCBNBトークンでのみです。
平均的な消費者を獲得するのに必要な利点がAirbnbにあることは明らかです。 同社は時間をかけて物件リストを拡大してきたのであり、結果としてユーザー獲得を科学にまで落としむという、最適化のための時間がありました。
また最後の最後に顧客を失った!
Airbnbが年月をかけてこれまでサイトを運営してきたという点は決してさまつなポイントではないのですが、ここではあえて無視して、支払いオプションがユーザー獲得に及ぼす影響に焦点を当ててみましょう。
eコマース企業は、支払いプロセスにおける摩擦を減らすためにかなりの時間を費やしているものです。支払いに関し、デジタルマーケティングの担当者が大切にしているポイントは次のようになります:
- 顧客に求める情報を減らす
- モバイル端末を使った訪問者のためにサイトを最適化する
- オートフィル機能を活用する
- 多数の支払いオプションを用意する
CBNBトークンでの支払いを要求すれば、クリプトBNBはこれらすべての項目でひっかかってしまいます。典型的な支払いプロセスは次のような感じになるでしょう。顧客がサイトを訪問→リストから選択→支払い→CBNBトークンでの支払いを求められる→「 CBNBトークンがない?問題ありません、第三者外国為替取引所から購入してください」 →顧客が混乱→顧客がAirbnbに逃げる
仮想通貨は平均的な消費者にとって入手も使用も難しいことを忘れてはいけません。クレジットカードのように使うほど簡単でないのは確かです。その結果、消費者ありきのトークン仕様ブロックチェーン企業はすべて、コンバージョン問題を抱えることになります。
どちらかに腹を決める…
トークンが支払い手段となる企業(は非常に一般的です)は、現在おもに次のふたつのアプローチに取り組んでいます:
- 分散型アプローチ:顧客はトークンを使用してネットワークに直接支払う。このオプションは分散化の目標により沿ったものだが、ユーザーが第三者サイトからトークンを取得しなくてはならないのは、コンバージョン上の主な失敗要因になる。手数料などの費用も別途かかる。これは、消費者がクレジットカードの使用でポイントまで獲得できる現状に比べて、明らかに劣っている。
- 中央集権型アプローチ:この方法では顧客がまずクレジットカードで支払いをし、企業が裏でトークンを使いネットワークに支払う。このアプローチはコンバージョン問題の解決にはなるが、Airbnbなら考えなくていいコストが複数かかる。たとえば手数料や価格スプレッドの隠れコスト、注文スリッページ、イーサリアムのネットワーク料金等々。
企業はICOを通じて資本調達するために、競争の激しい不利な立場に意味もなく置かれているようにみえます。これがまさに、主な目的が支払いであるユーティリティトークンに私が消極的である理由のひとつです。消費者向けアプリのほとんどにおいて、「ブロックチェーン」の利点が低価格競争に勝ることはないでしょう。
じゃあなんでトークンを持っているわけ?
eコマースにおいては、トークン化されたブロックチェーン企業が一体どのようにしてハイテク株式会社と「単価」ベースで競争できるのかを想像するのは難しいことです…
- 消費者が重要視する価値の追加
- そのほかで大幅なコスト削減を実現
競合相手と比較した時に、規模で勝る具体的な価値を提供することが、ブロックチェーン企業にとっては必要不可欠です。長期的に見れば、すべてのユーティリティトークンの価値は、基盤となるプラットフォームに対する実際の需要次第だからです。もし企業がユーザー獲得においてトークンによる障壁を抱えている場合は、決して実現しないかもしれません。
私がこれまで見てきたほとんどのケースで、支払いトークンをめぐりICOした企業は、トークンの発行やブロックチェーンの使用に十分な目的があるとはいえませんでした。 私が企業に必ず問うのは、「あなたのプラットフォームがイーサリアムのみを受け付け、典型的なSaaSモデルベースで課金できないのはなぜですか?」—この問いに対する答えが大体、そのプラットフォームのトークンが有用かどうか、 企業が単にICOを通じて資本調達するための言い訳としてトークンを発行しているのではないか、に光を当ててくれます。
最初に失敗するのは支払いトークン
2018年の後半、投資家は新たな情報に基づいた投資決定を行うために、トークン化されたブロックチェーンプラットフォームの採用メトリクスに注目し始めるでしょう。このプロセスにより、競合するテクノロジーに関して意味のある価値を提供しないブロックチェーンプラットフォームが、そのトークン価格を通じて市場で発見され、「処罰」されます。
ICOを通じて資金調達する手段としてのみトークンを発行した企業は、市場がひとたび投機的でなくなれば、長期的な成功を収める準備ができていません。支払いトークンはコンバージョンとプラットフォーム化において、生来不利であるため、最初に失敗するタイプのユーティリティトークンだと私は考えています。
もちろんいくつかの成功事例はあるでしょう。が、ほとんどの起業家は、顧客がユーザー獲得のハードルを超えるのに十分なほど具体的な価値を生み出すことができないと思います。
メリットのあるトークンを求めて…
より長期的な投資の可能性を求めているICO投資家は、トークン自体がユーザー獲得の壁にならないようなものに目を向けるべきです。つまり、プラットフォーム内のトークンの目的が、何らかのかたちで「発明的」であり、かつそれ自体が運営上の役割を果たしており、ユーザーフレンドリーであること。
こうした基準に見合ったトークンの例として、AQUA発行のそれが挙げられます。医薬品の研究開発を中心にした知的財産権のプラットフォームを構築している企業です。 彼らのトークンは、研究開発における世界規模のコラボレーションのために、エコシステムを構築しうるわずかな知的財産権の割り当てを可能にするものです。AQUAのトークンには、特に興味深い2つの特徴があります。ひとつ目は、あるグループの知的財産を後に別のグループの知的財産に結合できる柔軟なアーキテクチャ。これにより、以前の研究を基に新たな研究をすることができます。 ふたつ目は根本的なトークンの価値構造。AQUAプラットフォーム上のすべての知的財産をめぐる成功において、トークン所有者に利益 をもたらしてくれます。
結論
今後12カ月以内に、資産のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)がトークンの評価を引き上げるという推測に暗い影を落とし始めます。したがってICOの投資家は、基礎となるプラットフォームの長期的な可能性に対し、各トークンが及ぼすであろう影響を査定すべきです。 支払いメカニズムとして機能することを第一の目的とするトークンには、この点で固有の不利益があるようにみえます。 議決権、パワー、運営および従来の株式による資金調達が存在しないその他の分野は、トークンが長期的価値を保持する可能性がより高いユースケースです。