2019年8月21日にディーカレットさんから電子マネーチャージのサービス開始という発表が行われました。
電子マネーチャージ、レバレッジ取引サービスの利用開始およびETHの取扱いのお知らせ
仮想通貨をモバイル上で電子マネーに交換しお店での決済に利用できるようで仮想通貨を身近に感じる時代の到来を感じさせられます。まさに今注目を浴びているディーカレットさんのCTO白石陽介様へ今年の5月にインタビューをさせていただく機会がございました。仮想通貨法規制の厳しい国の一つである、日本の規制を満たした最新の取引所の思考や未来への構想など、盛り沢山の内容ですので是非最後までご拝読ください。ブロックラビット編集部より
(インタビュー日:2019年5月10日)
Block Rabbit編集部:白石さん本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます。宜しくお願い致します!
白石さん:宜しくお願いします。
Block Rabbit編集部:まずはディーカレット様の行われている事業と現在の状況を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
白石さん:ディーカレットは、2019年4月16日より仮想通貨の取引サービスの提供を開始しました。初夏には新しい取扱い通貨となるイーサリアムの追加に加え、証拠金取引も出来るように準備中です。
ディーカレットは最初のフェーズとしては、仮想通貨の販売所としての機能を提供しています。
時期フェーズ以降長期的な取り組みとして何をやりたいのかというと、個人向けの取引所特化したいわけではありません。将来的には、仮想通貨だけではなく様々な特徴をもつデジタル通貨やコインが増えていくのではないかと思っています。それぞれのデジタル通貨やコインが使える経済圏が特定されるという世の中ではなく、別の経済圏でも使いたいというニーズが出て来た際にも対応できる、コインなどに交換が出来るプラットフォームに我々がなれる様に動いています。
利用者が取引としての仮想通貨ペアで儲かった、損をしたというだけの世界観ではなく、ディーカレットを通してデジタル通貨に交換したらそのまま実社会で使っていく事ができるというストーリーを描いています。
私達はデジタル通貨と名称を定義する事で、電子マネーやポイントを含め、人が価値を感じ、流通するデジタル通貨の定義を満たすもの全てが我々のスコープとなっています。
Block Rabbit編集部:電子マネーとの連携が話題となっていますが、狙いを教えていただいてよろしいでしょうか。
白石さん:何かしらの電子マネーを出口にしたいとは考えています。デジタル通貨の一つとして仮想通貨がありますが、今は仮想通貨を買っても使い道がほぼなく、実需がないので仮想通貨の取引に留まっているのも現実です。
我々はデジタル通貨で生活が出来るような、インフラとして成り立っている世界観をイメージしています。買ったものでいくら儲かるのかといったことではなく、買ったデジタル通貨をどう使えるのか。デジタル通貨によってどう消費活動が出来るのかが大事だと思っています。
デジタル通貨の利用シーンを広げる方法として、例えば自社でQRコードを付与することも出来ますが、我々がやりたいのはそういうことではないなと思っています。それよりは、既に普及している電子マネー事業者と連携する事で、仮想通貨でもお買い物が出来るというイメージを持ってもらう方が良いと思っています。そうなれば、電子マネー100円分を100円でチャージするよりも、ビットコインが上がりそうだから100円分買って、そのまま電子マネーとして何か買い物をしようかなという流れが出来ると思っています。
Block Rabbit編集部:2019年5月8日 にコンビニ入金の新サービスが開始されましたが導入の目的を教えていただけますか。
白石さん:ディーカレットでは現在の銀行口座を持っていなければディーカレットの口座を使えないといった考え方を払拭する為に、コンビニ入金というサービスを加え手軽なイメージを利用者の皆さんに持って頂く事が狙いです。
日本では銀行を持っていないアンバンクドの人は少ないですが、コンビニ入金が出来る事で銀行口座がある無しに関わらず誰でも入金する事が出来る。極端な話、子供でもコンビニなら入金が可能です。(注:現時点では、ディーカレットは未成年の方へのベーシックアカウントのお申込みができないため、未成年の方のコンビニ入金はできません。ゲスト登録は未成年でも可能です)
Block Rabbit編集部:デジタル通貨への取り扱いについて世間ではネガティブな意見が絶えませんが、認証などの技術に関してディーカレットさんではどういった取り組みをされていますでしょうか。
白石さん:認証技術としてディーカレットでは二要素認証を搭載しています。
セキュリティーはユーザビリティーとのトレードオフだと思いますが、どちらかというと私達はセキュリティーに重きを置いています。我々はサービス設計をする際に、日本の仮想通貨交換業者ではなく既存の銀行や証券会社といった金融事業社を参考にしてサービス設計をしました。
Block Rabbit編集部:なるほど、明確な違いは何でしょうか。
白石さん:仮想通貨交換業者の登録審査プロセスの報道発表資料の公開で大きく業界の色が変わりました。審査プロセスが公開される以前の仮想通貨交換業は金融業としてのサービス設計というよりは、ユーザビリティーを重視したWebサービスに近かったと感じています。ディーカレットは始めから既存の金融事業者と同じレベルの安全性、サービスの安定性、高いセキュリティーなどを意識した上で使い勝手を整えました。
Block Rabbit編集部:IIJとディーカレットさんについての関係について教えて頂いてよろしいでしょうか。
白石さん:筆頭株主の位置付けです。
Block Rabbit編集部:白石さんがディーカレットさんで働くことになったきっかけなど差し支えなければ教えて頂いてよろしいでしょうか。
白石さん:私は2005年にIIJにエンジニアとして入りましたが、バックボーン※よりの仕事から、直接お客様と話をし、ニーズを聞き出しシステムに落とし込んでいくフロントよりの部署で働くようになりました。その時のチームのトップが現ディーカレット代表取締役社長の時田です。社会人3年目の時に彼のプロジェクトチームに入り、色々な意味で可愛いがって頂きました(笑)。IIJとしてのキャリアの最後は、金融システム事業部で証券システムのコンサルティングに数年従事しました。
その後ヤフージャパンに転職し、認証や金融決済に従事しました。その中で、電子マネー事業の立ち上げを行いました。QRコード決済事業の立ち上げはやりがいはありましたが、紙のお金をスマホにチャージして使うという事は、インターフェイスが紙からデジタルになり、ユーザビリティーが向上しただけなので、本質的にはキャッシュを使う事と変わらないと感じていました。
※インターネットサービスの基幹を支えるネットワーク
そんな中で、仮想通貨を横目でみていた時に、代表取締役社長の時田と再会し、ディーカレット設立の構想を聞きました。彼曰く、仮想通貨のテクノロジーであるブロックチェーンはインターネットが出来た以来のパラダイムシフトになる。今みんなが、日銀が “お金” と定義する法定通貨を、唯一のお金だと思って使っている今の社会の前提が転換するようなタイミングはなかなかないと。

戻ってこいと言われましたが、電子マネー事業の立ち上げをしていたので、すぐに異動する事は難しく、その時は終わりました。その後、私が出がけていた電子マネーサービスが立ち上がり、落ち着いた時に、ディーカレットも1年程準備した取引所がほぼ出来上がり、いよいよデジタル通貨のプラットフォームを作っていくという時で、タイミングが合い仲間になりました。
私は5年間、キャッシュレス化を目標に決済サービスの立ち上げをしてきました。しかし、どんな決済サービスでも結局は銀行やネットワークにかかるコストが大きく、ユーザーが直接決済するようにならない限り、手数料が0にはなる事はあり得ないなという構造的な課題を感じていました。どこまでやっても紙がデジタルになる以上のものにならないというジレンマがありました。
本質的にキャッシュレスを突き詰めるならば、新しいテクノロジーでパラダイムを変えないといけないという課題感はありましたね。
そんな中ディーカレットがやろうとしている事は私が5年後に実現したいことと合致していました。
5年前QRコードをやろうとしたら日本では流行らないよと笑われた。でも今では1つのムーブメントにはなった。
今、デジタル通貨だけで消費活動を行ったり、いろんな地域団体がそれぞれのデジタル通貨を発行し、トークンを交換しあったりするなんてほとんどの方がイメージ出来ないと思います。
新しいサービスは普及するまでの間は辛い事もありますが、数年後はこれが当たり前になっていると思いますし、そうなるようにしていきたいと考えます。
Block Rabbit編集部:白石さんはこれまで数々の新事業を立ち上げてこられたと思いますが、これまでで一番苦労されたことを教えて頂いてよろしいでしょうか。
白石さん:それぞれのフェーズで色々な仕事をしてきたのでそれぞれの楽しさ辛さはありましたが、ヤフー時代に決済領域の責任者をしていた頃、あるジレンマがありました。
それは、海外で流行っている金融や決済のサービスを日本に持ってこようとしても同じようにはできないという事です。例えばアメリカと日本では、法律や決済に関わる文化、国民性が全く異なります。ですから、海外で上手く行っているサービスをそのまま日本に持ってこようとしても上手くいかないという事が多々ありました。
しかし、インドとアメリカでは同じサービスが受け入れられていたり、シンガポールとアメリカでは同じスキームで出来るけど日本ではできないという事例も多くあります。例えば、海外では共通のクレジットカードや銀行のインフラの仕組みが日本は独自であったり、関連する法律の考え方が日本は違うという事を海外のプイレイヤーに理解してもらいながら日本でサービスを作っていくのはとても大変でした。
Block Rabbit編集部:まずは日本の規格とインフラにあったシステムを構築されていると思いますが、クリプトカレンシーを扱うということで日本だけでなく世界にも通用する仕組みというのを将来は構築を考えられていると思いますが、その点はいかがでしょうか。
白石さん:ディーカレットがどうグローバルに出ていくかは現段階では何も決めていません。日本の今の厳しい規制はポジティブに捉えています。なぜかというと、日本は世界の中でみても仮想通貨に対して真っ向から政府が向き合っている国の一つです。現に、日本は規制が厳しくなっているので実際にプレイヤー達が規制の緩い国へ出ていっています。
しかし、世界基準で見た時には結局それらの国もゆくゆくは規制が強くなっていきます。国外へ展開していく際に、国際金融の世界で芽を摘まれないようになるには、日本のように先行して規制を考えて来た国で正しくやっていく事が結果的に世界で戦える準備が出来ている事になると思います。
私達は短期的にやりやすい国で儲けるような視野でやるつもりはありません。10年、20年後のデジタル通貨のインフラの構築を考えています。厳しい規制の中で揉まれる事は長期的目線では大事なことだと捉えています。1日も早く、仮想通貨交換業が既存の金融機関と比べても何の不安もない業態になっていく事を望んでいます。
Block Rabbit編集部:最後になりましたが、白石さんのご趣味を教えて下さい。
白石さん:ロードバイクです。実は前職では自転車競技部を創設部長として立ち上げたりもしました。明日も走行会で高崎駅から白馬まで行く予定です!
Block Rabbit編集部:すごいですね!本日は貴重なお話をありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?Block Rabbit編集部が今回のインタビューから感じたことは、ディーカレット様がとても落ち着いて1つ1つの事業を丁寧に行われているという事です。10年、20年先の未来を確実に見据えて、デジタル通貨の利用をより良くするディーカレット様の今後のご発展とご活躍をお祈りすると共に、Block Rabbitでも皆様へ今後の動向を発信していきたいと思います。
最後になりましたが、今回インタビューの実現にご協力頂きました同じくディーカレットの小林様、誠にありがとうございました。
