クリプト訪ねて三千里:第717話
インパーマネントロス

DeFiのインパーマネントロス – 流動性を提供する際に生じるリスク

翻訳を試みています。(意味の取りにくいところは適宜調整)


乖離性損失とも呼ばれるインパーマネントロスは、AMM(Automated Market Maker:自動マーケットメーカー)の流動性プールでトークンを保有している場合と、単にブロックチェーン上でトークンを保有している場合(=HODLing:ガチホ、ガチでホールディング)との差異を数値で表したものです。トークンを市場の流動性のために提供する場合は、流動性プールから他のユーザーに資金を提供します。ガチホの場合、トークンを単に時価で保有しているだけです。

流動性を提供する際、流動性プール内のトークンの価格はどの方向にも乖離する可能性があります。乖離が大きければ大きいほど、ユーザーである流動性提供者が被るインパーマネントロスは拡がります。これは一時的なものでしかないため、インパーマネント(永遠:パーマネントではない)と呼ばれています。トークンの価格が、ユーザーが投資した元の価値に戻れば、損失はなくなります。これは流動性プールではよくあることですが、ユーザーが流動性供給を止めて損失を確定したり、価格が乖離し続けて結果的にユーザーがより多くのトークンを失ったりすると、永久的な損失となります。

市場の変動により、短期的には損失が永久に続くことがあります。これにより、ユーザーのプールへの投資がマイナスのリターンになると、深刻な影響を受けます。これは、自動マーケットメーカーがトークンの価値をどのように値付けするかによって起こります。自動マーケットメーカーが外部の市場と直接つながっていない場合、他の取引所で価格が変動しても、自動的に価格を調整することができません。

流動性プール
ユーザーが流動性プール(例:Uniswapプール)に参加する際には、ETHと別のトークンを50/50の比率でセットしたトークン・ペアを預ける必要があります。これは、2つのリクイディティ・プールのトークンの積が、取引後に取引前と同じになるようにする(手数料考慮せず)という、積が一定の値になるという法則に従っています。

k = x * y

この例では、ETHをx、別のトークンをyと表すことができます。この場合、yはトークンペアのDAIの量を表します。1ETH=100円とします。プールは10ETH(10 * 100)を提供し、これは1,000ドルの価値を持つことになります。プールは同額のDAIを保持していなければなりません。この場合、1DAI=1ドルなので、1,000DAIとなります。

ETH=100ドル
DAI = $1
1ETH=100DAI

としたときに、プールはバランスが取れています。

x = 10 ETH
y = 1000 DAI
k = 10 * 1000 = 10000

定数kは、プールでの取引の前後で常に等しくなければなりません(手数料を差し引いた値)。値kは、ETHの流動性プールとそのトークンペアの流動性プールの積であり、この例での積は10000で、この値を一定に保つためには、変更があった場合にはリバランスする必要があります。

リバランスとは、仮に一定量のETHを失うことになった場合、自動マーケットメーカーはDAIを多く購入することでバランスを取り、一定の商品が変わらないようにすることです。

プールサイズの貢献度の合計は

LPトータル = ETH(x) + DAI(y) = 100(10) + 1(1000) = 1000 + 1000 = 2000

同様に、各トークンの任意の価格におけるリクイディティ・プールのサイズは、ETHの価格に対して与えられます。

LP = リクイディティ・プール
pETH = ETHの価格
ETH LP = √ (k / pETH)
DAI LP = √ (k * pETH)

ETH LPの場合。
= √ ( 10000 / 100)
= 10
DAI LPの場合。
= √ (10000 * 100)
= 1000

pETHはP1と同じで、ETHの元々の価格100です。
ここで、ETHの新しい価格P2が110に上昇し、資産価値が10%増加したとします。

ΔP = ( P2 – P1 ) / P1
∆ P = ( 110-100 ) / 100 = 0.1 または 10% です。
P1 = 100
P2 = 110

これにより、プールのバランスが変わります。現在、ETH P2の値pETHは110となっています。

ETH LPの場合。
= √ ( 10000 / 110)
= 9.534625892455923

DAI LPの場合。
= √ (10000 * 110)
= 1048.808848170151547

kの値が均衡を保つためには、ETHの量が減少した場合にDAIの量が増加する必要があります。

x = 9.534625892455923 ETH
y = 1048.808848170151547 DAI
k = 9.534625892455923 * 1048.808848170151547 = 10000

これにより、P2 ETHの価格が10%上昇するという裁定機会が生まれます。裁定機会を狙う裁定トレーダーは、自動マーケットメーカーが更新されなければ、自動マーケットメーカーからより低い価格でETHを購入することができます。裁定トレーダーはまた、ETHのためにDAIを売ることでプールのバランスを取るというインセンティブを得ます。

プールの流動性が1%のユーザーは、手数料を除いて、0.01(9.5346)または0.095346258924559ETHと0.01(1048.8088)または10.4880481701515 DAIのみを請求できます。ユーザーはETHを失いましたが、DAIで得をしました。ここでは、ユーザーが流動性を提供した場合と、ユーザーがトークンをただ保持していた場合の価値の違いを示しています。

LP(V1)の場合
1048.8088 (9.5346 eth) + 1048.8088 (1048.8088 dai) = 2097.62
ホールディング(V0)の場合
1000(dai)+1100(eth)=2100

その差をもとに、ユーザーが失ったのは以下の計算となります。

L = V1 – V0
L = 2097.62 – 2100
L = -2.38

DAIを売ることで、ユーザーはプールで48.81を獲得します。裁定トレーダーは、プールからETHを購入し、他の取引所でより高い価格で売却することで、2.38ドルの利益を得ます。

プール上の流動性提供者(ユーザー)は、自分のトークンを保有するだけで、流動性を提供しない場合と比較して、2.38ドルの流動性を失います。これはリターンに対するマイナスであり、これこそが乖離性損失またはインパーマネントロスです。乖離性損失は、流動性が最初に供給されたときと、現在のトークンの価格との価格比で計算することができます。


以上が、インパーマネントロスの説明となります。次回はその続きになりますが、乖離性損失についての翻訳版を提供いたします。

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BlockRabbit『クリプト訪ねて三千里』とは。

第596話からのターン。バトンタッチを受けたcryptoトレーダーは、DeFiとは何ぞや?ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムを書いていきます。

~第595話まで
現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。

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ABOUTこの記事をかいた人

農耕型・堅実派のアルゴリズムトレーダー。夢はヘッジファンドを自動で運用することです。簡単なプログラミングからパソコンの組み立てまで全て一人でできるバランス感覚の持ち主です。 DeFi(分散金融)をわかりやすくお伝えすべく「クリプト訪ねて三千里」に挑戦しています。