DAO(Decentralized Autonomous Organization: 自律分散型組織)であるBuild Finance DAOが組織のガバナンスを乗っ取られるという事件が発生した。今回の乗っ取りでは、悪意のあるコミュニティメンバーがガバナンストークンであるBuildトークンのコントロールを得るというようなプロポーザルを通した。
Build Finance DAOはイーサリアム上に構築されたベンチャー型のDAOで、Buildトークンを通して様々な仮想通貨プロジェクトの資金調達から、雇用プロセス、プロジェクトの進捗管理といった様々なサポートをプロジェクトに提供することを目的としていた。
従来の株式会社の仕組みと同じように、DAOの未来もトークン保持者の一存に委ねられている。それは、トークンが株式会社の株のように機能して組織内での発言力に直結しており、トークン保持者同士の協議によってどのプロジェクトにどのように資金を割り当てるのか決定しているからだ。しかし同時にトークン保持者は自発的にDAO全体にプロジェクトを提案することも可能である。
そして今回の事件では、Build Finance DAO内で、ある特定のユーザーにガバナンストークンを好きなだけ発行/破棄できる権利を与えるようなスマートコントラクトが追加されてしまった。これにより、この権利を受け取ったユーザーは大量のBuildトークンを自分で発行し、それを売却することで利益を得たようだ。
このような提案がDAO内で可決された背景として、このユーザー自身がBuildトークンを大量に保有してたことがある。そのトークンで自身で提案に投票して可決し、報告によれば当時その提案に対するコミュニティ内での注目度もかなり低かったようだ。多くのコミュニティメンバーがこの活動に気付かなかったのも、今回の主犯が活動を察知されないように慎重に準備を進め、提案をコミュニティに周知させるためのDAOの機能を幾つか無効化していたためである。
未だ発展途上のDAOはこれからもこのようなスキャンダルが続くだろう。トークンを中心としたガバナンスは資金力をもつ個人がガバナンスを征服するすため、通常の株式会社よりも資金力の限られた個人が集まるDAOではより組織の乗っ取りも用意となっている。今後どのようなDAOが生まれ、社会的地位がどのように形成されていくのか継続して注目していきたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
BlockRabbit『クリプト訪ねて三千里』とは。
第924話からのターン。暗号資産、DeFi、NFTに感化された新進気鋭の若手が定期的に登場します!
ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムもあり、アメリカ発の最新情報など絶妙にサンドウィッチされて生きた情報をお届けいたします。
第596話~第923話まで、バトンタッチを受けたcryptoトレーダーは、DeFiとは何ぞや?ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムを書いていきました。
~第595話まで
現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。