前回の記事、オンラインにおける最高のセキュリティーとプライバシーの答えは暗号化?ではセキュリティとプライバシーに焦点を当て、ブロックチェーン技術とチャット・アプリによる「政府から完全に解放された送金システム」の展望について、をまとめてご報告しました。それと対照的な動きとして、ここ24時間以内に次々と仮想通貨に対する「政府の介入」、つまり規制をめぐる専門家の見解が出てきているので、今回はそれをまとめます。
韓国が日本や中国とタッグを組んで規制を模索
9日付のBitocoin.comの記事 South Korea to Cooperate with China and Japan on Regulationによると、韓国の金融サービス委員会(FSC)が、今後日本や中国と三カ国体制で協力して、仮想通貨の投機的取引に対応する道を模索していることが明らかになった。現在韓国の6銀行が韓国当局の査察を受けているという。FSCのChoi Jong Ku委員長は、仮想通貨投資における「非合理的なトレンド」を警告、「投機的な投資熱が続いている」との見解を示した。
もっとも問題視しているのは、仮想通貨が決済方法としての役割をはたすこと。詐欺や不法な資金調達、ハッキング、投機、市場価格の操作など、「仮想通貨が引き起こす副作用」の長々としたリストに言及。これらの副作用を最小限化するため、仮想通貨に関連する企業を閉鎖する可能性にも含みを残している。
遅かれ早かれ政府が匿名性を問題視し介入する
同日付のcointelegraph.comの記事Harvard Professors Predict Bitcoin Collapse Due to Government Regulationは、その名も「ハーバード大の教授たちは政府による規制でビットコインが崩壊すると予想」。ハーバード大の経済専門家たちの見解がまとめられている。いずれ金融上の匿名性に対するリスクが問題視され、最終的には各国政府に潰されるだろうと言うのは、Kenneth S. Rogoff教授だ。FSC委員長同様に、特に仮想通貨による決済がネックになるだろうと指摘する。
「仮想通貨で匿名性の取引を小さくしているうちはいいが、大規模な決済ともなる話が別になる。政府にとっては税金徴収および犯罪対策において、大きく立ちはだかる壁となるからだ。」
一方、Jeffrey A. Miron教授は、政府がどう介入すべきかについて少し見解がことなる。が、最終的に行き着く先は同じだろうと考えている。
「もし各国政府が仮想通貨を決済方法としては認可しないながらも、平和的に存続させることがあれば、私はそれが最善の道だと思う。しかし政府は、遅かれ早かれ仮想通貨を絶滅に追い込むだろう。」

ビットコインの宿敵ジェイミー・ダイモンも断言
これまた9日付のcointelegraph.comの記事 JPMorgan CEO Makes Unclear Statements On Bitcoin and Government, Suddenly Likes Blockchainによると、昨年ある会合でビットコインを「詐欺」と呼んだJPモルガン・チェイス銀行のジェイミー・ダイモンCEOが、「すべての仮想通貨はいずれ政府にコントロールされるだろう」と、同日サンフランシスコで行われていた会合で発言。
仮想通貨の「不信を起こさせる性質」がネックとなり、世界各地の政府は仮想通貨がメインストリームに参入することを許さないだろうというのだ。例外があるとすれば、政府が背後に控える仮想通貨か、「デジタル・ドル」のような法定通貨のみだろうと断言する。
「(仮想通貨の長期的な役割は)全くないだろう。個人的に言わせてもらえば時間の無駄だ。政府がコントロールしていない“ホンモノの通貨”が世界に流通することはない。そんなことを長い間許しておく政府が存在しないから。」
一方で、ブロックチェーン技術は今後も活用され、開発され続けるだろうとの考えを示した。が、その技術により送金される通貨は仮想通貨ではなくて、米ドルだと話す。
仮想通貨は国家に対して完全に匿名性があるわけではない
匿名性の決済を問題視する見解が続くが、ビットコインが決して匿名性を有しているとは言えないことも思い出す必要があると、cointelegraph.comの記事は指摘する。たとえば米内国歳入庁(IRS)は、ビットコインによる利益の未申告を摘発するため、ブロックチェーン分析を提供するChainalysis社に協力を要請している。
先述の韓国では、先月関係当局がクライアントの資産を管理するために仮想通貨取引所によって使われる「仮想口座」の開設を銀行に対して禁じた。この新制度のもとで匿名取引は消え、1月末までにトレーダーの実名検証が義務付けられることになる。
韓国当局が望んでいるのは、銀行がマネーロンダリングの病巣となりかねない仮想通貨取引の門番になることだという。銀行が金の不法な流通について沈黙していることを懸念し、今回の一連の査察もそれを明らかにするためのものと主張している。
少なくとも今の時点でわかっているのは、韓国が仮想口座を一時停止処分にしたことであり、今後の査察で違法行為が摘発されれば、こうした口座は即時閉鎖されるということ。そして仮想通貨取引に対する新たな課税計画および脱税の懲罰計画が進行中ということである。

結論:政府は仮想通貨の敵という考え方は本当にユニバーサルなのか
これまで見てきた3本の記事に登場するプレーヤーたちに共通する主張は、「国家は自らの手中におさまらない仮想通貨を憎み、いずれ鉄拳をふるってこれらを破壊するだろう」というものです。しかし、2017年には世界各地で、複数の政府が独自の仮想通貨制度を考慮していると発表。ベネズエラにいたってはすでに始動しているということがこの記事 President Maduro: Venezuela to Issue First 100 Million Petrosからも明らかです。今後少なくとも、既存の貨幣・金融制度下では機能できていない国々が、仮想通貨中心の経済に舵を切る可能性は大いにある、ということなのかもしれません。