クリプト訪ねて三千里:第1385話
物理インフラ×ブロックチェーンの可能性:DePINで築く新たな社会インフラ

DePIN (Decentralized Physical Infrastructure Network) は、Web3の革新的な分野の一つであり、ブロックチェーン技術と物理的なインフラの融合を図る概念です。従来、インフラは大規模な中央集権的な組織が提供・運営してきましたが、DePINはその構造を分散化し、ユーザーやコミュニティがインフラの一部を所有・運営することで、効率的かつ低コストでスケーラブルなインフラストラクチャを構築しようとしています。以下にDePINの仕組み、特徴、代表的な事例を取り上げて解説します。

DePINの仕組みと特徴

DePINは、分散型のブロックチェーンネットワークを通じて、インフラの所有・運営をコミュニティメンバーに委ねます。これにより、個々のユーザーや小規模な事業者がインフラの提供・運営に貢献し、貢献度に応じて報酬を得られるインセンティブモデルを採用しています。このモデルは、大規模なインフラ投資や維持コストを削減し、より持続可能なインフラを構築するための新しいアプローチを提供します。

  • 主な特徴

• 分散型所有権:参加者がインフラの一部を所有または管理し、ブロックチェーン上での取引が透明化される。
• インセンティブベースの運営:各ユーザーの貢献に応じてトークンや報酬が与えられ、ネットワーク全体の成長を促進。
• スケーラビリティと柔軟性:参加者の増加により、ネットワークのカバレッジとパフォーマンスが向上。
• データの信頼性とセキュリティ:データの記録や管理がブロックチェーン上で行われ、改ざんが困難なため、セキュリティが向上。

DePINのメリットと課題

DePINは、次のような利点を持ちます:

1. インフラコストの削減:ユーザーがインフラの一部を運営するため、運営コストが大幅に削減される。
2. 信頼性の向上:分散型ネットワークによる信頼性が高く、システムのダウンタイムも少ない。
3. スケーラビリティ:参加者が増加することで、自然にネットワークが拡大し、より多くのカバレッジを提供。

しかし、課題も存在します:

• 技術的なハードル:ユーザーが機器を運営するため、一定の技術知識が必要。
• 規制面の課題:物理インフラの分散運営に対する規制が進んでいない地域もあるため、法的なリスクがある。

DePINの代表的な事例

1. Helium Network

Heliumは、分散型無線ネットワークを構築するプロジェクトで、IoT(モノのインターネット)デバイスのための低電力・長距離の通信を提供します。各ユーザーが「Hotspot」と呼ばれる無線デバイスを設置し、データ通信をサポートすることで、Heliumのネイティブトークン(HNT)を報酬として受け取れます。Heliumのユニークな点は、中央集権的な通信インフラに依存せず、ユーザー自身がネットワークを構築し、維持する点です。これにより、世界中に低コストでスケーラブルなIoTネットワークが急速に普及しました。

2. Filecoin

Filecoinは、分散型のストレージネットワークで、データの保存や配布においてDePINモデルを採用しています。従来のクラウドストレージサービス(例:AWSやGoogle Drive)とは異なり、Filecoinは参加者がストレージプロバイダーとしてデータを提供し、ユーザーはブロックチェーンを通じてそのストレージを借りる形です。これにより、データが特定のプロバイダーに集中せず分散管理され、セキュリティと耐障害性が向上します。さらに、ストレージ容量がネットワーク全体の拡張に合わせて増加するため、データ管理のスケーラビリティも向上します。

3. HiveMapper

HiveMapperは、車載カメラを使って地図データを収集し、ユーザーが収集した地図データに対して報酬を支払う分散型マッピングプロジェクトです。従来の地図サービス(例:Google Maps)は、データの収集と更新にコストがかかりますが、HiveMapperでは各ドライバーが提供する映像を基にして最新の地図データを生成するため、コストを削減しつつ、最新情報を維持できます。参加者は、ドライブレコーダーなどのデバイスで得た映像に基づいてトークン報酬を受け取れるため、インセンティブにより参加者の拡大が進んでいます。

DePINの未来と応用範囲

DePINは、IoTやデータストレージ、マッピングといった既存の分野に留まらず、さらに多様な分野への応用が期待されています。たとえば、エネルギー管理分野では、分散型の電力供給ネットワークやエネルギーストレージが考えられます。また、インフラ分野では、太陽光発電や電力網の分散化により、地域に依存せずエネルギーを供給するモデルが登場する可能性もあります。

DePINは、ユーザー主導でインフラを運営・拡大することで、地域社会への影響も大きく、従来のインフラ提供モデルに革命をもたらしています。

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現在の実体経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。

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