ブロックチェーンの相互運用性の未来

こんにちは!
7月から、海外でブロッチェーン業界に知識とサポートを提供することで高い評価を得ているspecrationality.comさんと提携し、サイト内の記事を日本語に翻訳してご紹介しています。第3回目は、前々回の「ブロックチェーンの相互運用性に新たなアプローチ(ホンモノの分散化とは)」に続き、さらに「相互運用性」の未来をつきつめた3部構成の記事です。

前回の第2回はBlock Collider 初心者ガイド:マルチチェーンプラットフォームの新アプローチでしたが、今回は再びBlock Colliderだけではなく、PolkadotArkなど、さまざまなチェーンの特徴を「相互運用性」というキーワードで俯瞰した内容になっています。的確な各チェーンの比較検討が図や表も多用して解説されていることから、ややテクニカルなテイストが強い部分もありますが、読み終わると、分散型相互運用性の技術や方法、そのプロトコルの「いま」が実感できること間違いなし!です。

相互運用性とは
相互運用性は、ブロックチェーンからブロックチェーン、さらにはオフチェーンで旧世界システムへ、リアルタイムで情報や価値をシームレスに伝えることを意味する。ブロックチェーン空間の成熟と拡大に欠くことができない極めて重要な要素だ。ついでに言えば、私たちは、相互接続性によって生み出される価値のパワーと広がりを知るのに、インターネット創世記までさかのぼればいい。相互運用性は常識のようにも見えるが、トラストレスな分散型の環境下でそれを追究するとき、その実現は非常に繊細であり困難を伴う。
ブロックチェーン空間がクリティカルマスに向かって加速するいま、この肝の部分を強化する最先端のテクノロジー、コンセプト、そしてプロジェクトをSpeculative Rationalityが分析した。
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Original Article : Interoperability Overview


ブロックチェーンの相互運用性の未来

相互運用性の概要
分散型台帳技術(以下DLT)空間をよく見てみると、サイロ化されてそれぞれが非常に異なる一連の公開/非公開チェーンが集まりであることがわかる。DLTが急速に成熟しつつあるなか、重要なインフラストラクチャの要件は、情報がチェーンからチェーンに、そしてオフチェーンで旧世界システムに、リアルタイムで情報が伝達される能力である。
しかし、なぜ相互運用性が必要なのかという質問の答えは、複雑なアプリケーションやニッチな機能など、かなり特殊なユースケースにデベロッパーやユーザーの気がいってしまって難解になりがちだ。この考え方をもっとはるかに単純なもの、相互運用性の基本に落とし込む必要がある。

接続性
このきわめて明白だが、しばしば見過ごされている相互運用性のユースケースが、サイロ内で引き続き機能はするものの、その潜在能力を最大限に発揮することのないDLTを伴わないコンセプトだ。たとえば、あらゆる分散型アプリケーションやネットワークを例に挙げ、接続性を有効にすることでダメになってしまうのか飛躍するのか問いかけてみよう。
インターネットが教えてくれたものがあるとすれば、それは接続性が世界にもたらした真の価値と変化の重みだろう。接続性自体は、つまり相互運用性のユースケースであり、このシンプルなコンセプトがもたらす価値を過小評価することは怠慢にほかならない。
相互運用性技術が完成し、包括的な接続性が利用可能になったと仮定すると、多くにとっての問題やディスコネクトは、BTC、ETH、NEO、EOSといったDLTまわりに形成された部族主義のなかに横たわっているのかもしれない。A国はB国と断絶したままでいるべきだ、と言っているようなものだ。しかしこの考え方では、接続性が密接に連結した既存の世界システムとDLTが競うことさえかなわなくなる。
したがって本記事では、おそらくもっとも人気がある分散型取引所など、多くの人が一般的に想像するような特定のユースケースには焦点を当てない。代わりに、グローバルな分散型経済において接続性が重要な役割を果たす世界を想像してみたい。相互運用性技術が現在直面する課題は、DLTのその他の中核的理念、特に分散化のトラストレスな性質を損なうことなく、接続性を効果的に最適化する能力にあるといえる。

分散型相互運用性の多様性

現在のランドスケープでは、ある程度の接続性はすでに明白だ。たとえば、ChangellyBinanceのような中央集権型取引所を例にすると、ひとつのトークンを別のトークンと交換するための媒体として機能している。しかし、これらの媒体は、根底にある取引アセットが構築された大元の、中央集権化された第三者機関のトラストを必要としない分散型ネットワークという理念に沿ったものとはいえない。
そういうものであるからして、空間内の答えは、ブロックチェーンの中核的な分権化の理念に沿った相互運用性に重点を置いた技術開発をすることだった。主な技術は次のように要約できる:

  1. 公証スキーム
  2. リレーチェーンとパラチェーン
  3. チェーン間ハッシュロッキング
  4. マルチチェーンウェービング

Please refer to Methods of Interoperability for more information

相互運用可能なチェーンの範囲と方法
公証スキーム 中継チェーン/パラチェーン(マルチチェーン) ハッシュロッキング マルチチェーン・ウェービング
価値トランスファー はい はい はい はい
データへのアクセス チェーン状態の検証 コアプロトコルの一環としてチェーン状態を完全把握 価値トランスファーに限定 コアプロトコルの一環としてチェーン状態を完全把握
バリデータの有無 はい はい いいえ いいえ
チェーンへの参加条件 ーコアプロトコル上のコンセンサス
ー新ブリッジ設置のためのリソース
ーコアプロトコル上のコンセンサス
ーパラチェーン/ブリッジチェーン設置のためのリソース
ー同類のハッシュ・アルゴリズム ーコアプロトコル上のコンセンサス
ーマイニング過程の一環としてメンバーチェーンを含むための技術的実装
ー調整されたマルチチェーンアーキテクチャにハードフォーク</t

本図式は、相互運用性プロジェクトで使用されるさまざまな技術と、ブロックチェーン空間内でこれらの技術が網羅できる範囲をまとめたもの

  • マルチチェーンプロトコルでは、すべてのチェーンの状態をひとつのブロックチェーン、つまりマルチチェーンに組み込む。基本的にあらゆるブロックチェーンが相互運用できるようになる。
  • 相互運用可能な公証スキームとして機能するプロトコループロトコル(DLT)は相互運用性を可能にするブリッジとしてのみ機能する。これは、公証スキームがソリューションとして実装するものと非常によく似た、他チェーン状態の検証を通じて行われる。
  • 公証スキームとブリッジ:各チェーンは個別の公証ブリッジを複数持つことができるので、必ずしも単体ではない。これらのブリッジは、相互運用できるブロックチェーン間の「検証ブリッジ」としてチェーン空間の外に存在する。
  • 公証ブリッジリンク:それぞれのプロジェクトの公証ブリッジは、潜在的にいかなるブロックチェーンにもリンクすることができ、機能条件は他のブロックチェーンの状態を確認できることのみため、エコシステム内の相互運用性を促進する。

上記の技術から導かれる重要ポイントは、分散化を維持しながらの確立された接続性の広がりという、分散型相互運用性を実現したこれら技術のさまざまな程度を特定する能力だ。
最終的にユーザーは、いくつもの相互運用可能な方法を、たとえ中央集権型取引所であっても選択できる。この選択をアシストするために、トラスト関係(ブロックチェーンの理念)、セキュリティとアクセス(接続性)に関して、これらの技術が解決する問題を考慮したい。以下の概要では3つの主要問題として提示し、さらに詳しく議論を展開する。

  • 1、相互運用性の機会/限度 –チェーン状態の完全把握か検証に基づくトラストとセキュリティ
    • 価値トランスファー
      • プロトコルのデータの一環としてメンバーチェーンの状態を完全把握
      • 互換性のあるチェーン通信(ハッシュロッキング)
      • バリデータによる検証に基づいた状態の確認
    • データへのアクセス – メンバーチェーンの状態を知ること– つまり、別ネットワークをと比較したデータの証明、およびスマートコントラクトやアプリケーションが「把握」を効果的に活用できるようにすること。 これは次を経由して達成できる:
      • プロトコルのデータの一環としてメンバーチェーンの状態を完全把握
      • バリデータによる検証に基づいた状態の確認
  • 2、相互運用性の方法 – バリデータの有無に基づくトラスト
    • 中央集権型ハブ
    • バリデータベース(バリデータ、第三者機関による検証)
    • 作業ベース(検証にバリデーターの必要なし)
  • 3、相互運用性へのアクセス – 参加条件
    • 条件付きの参加 – (例)スマートコントラクトかコアプロトコルへの変更が必要

 

第1の問題:相互運用性の機会/限度 –チェーン状態の完全把握か検証に基づくトラストとセキュリティ

ここでの変数はトラストベースで、ふたつのオプションは、チェーン状態の「把握」と状態の検証だ。 マルチチェーン技術は、すべてのメンバーチェーンが親チェーンの一部であるため、状態を完全に「把握」することができる。つまり、メンバーチェーンの最新状態を絶えず知ることができるわけだ。一方、公証スキームのバリエーションは、バリデータによる最新状態の検証を必要とする。簡単に言えば、マルチチェーンは常に完全把握(つまり内部確認)状態にあり、公証スキームはプロトコル外で情報を確認しなければならないという点が異なる。
セキュリティに関してこれをみてみよう。メンバーチェーンのデータがコアプロトコルの一部である(PolkadotBlock Colliderが提案したマルチチェーン技術のように)場合、それらチェーンの状態はプロトコル全体によって保証されているので、そのデータの検証 および使用はプロトコルと同じくらい安全だということになる。一般に提案されているように、トリガーされた相互運用可能なアクションに基づいて状態を検証する公証スキームは、チェーン間で情報をコアプロトコルに橋渡し(ブリッジ)する個々のチェーン、またはノードだ。ブリッジのセキュリティはコアプロトコルから独立しており、攻撃に対してよりぜい弱である。Arkのようなプロジェクトではわずかな例外もある。プロトコル全体が、全メンバーチェーンに対し、ひとつに結合した公証スキームとして機能。ブリッジが個々のチェーンやノードの集まりではないのである。そのようにすることで、利用されるリソースが多くの異なる小さなブリッジに分割されることがなくなり、より全般にセキュリティが確保される。

第2の問題:相互運用性の方法 – バリデータの有無に基づくトラスト

第2の問題:相互運用性の方法 – バリデータの有無に基づくトラスト
この問題を理解するためには、最初に、ブロックチェーン技術が構築された基本的理念と、それが最終的にはエンドユーザーにとって何を意味するのかを理解する必要がある。その理念や支柱は、4つのトピックに分かれると考えることができる:

  1. 客観的なネットワーク
  2. 偽造不可能な特質
  3. 真のトラストレスなネットワーク
  4. 真のパーミッションレスなネットワーク

分散型プロトコルの支柱として機能するこれらトピックのより包括的な解説については、こちらをクリック。

「トラストレス・モデルに関してもっとも価値のあるメリットは、ネットワークのあらゆる要素を改ざん、制御、検閲するパワーを保有し、信用された第三者機関(政府、銀行など)として機能するエンティティから、ネットワークの独立性を守る能力にあるといえる。
これは、バリデータの使用に依拠するその他のコンセンサスメカニズムを超え、トラストレス性の提供を可能にする、プルーフ・オブ・ワーク(以下PoW)の際立った特徴だ。ブロックチェーン内のバリデータは、ネットワークがトランザクションの検証を確認するために、一定程度のトラストを譲り渡す「人間的要素」または第三者機関をさす。 「[前略]トラストレスのスペクトラムを理解するには、第三者機関にトラストを完全にあずける中央集権型システムが一方にあり、トラストを排除するPoWのバリエーションが他方にあることを想像すればいい。バリデータに依拠した様々なコンセンサスメカニズムは中間に位置し、トラストの排除ではなく、むしろ再分配している。」
上記で言及したように、トラストの最小限化はブロックチェーン技術の非常に重要な要素だ。ネットワークをトラストレス状態に保持する試みとして、Block Collider (プルーフ・オブ・ディスタンス)が提案しているマルチチェーンのように、PoWにもバリエーションが存在する。さらなる(仕事量ベースの)マイニングスキームは、客観性と偽造不可能な特質を維持するものだ。この特質は、バリデータありきのコンセンサスの場合は損なわれる。
公証スキームは、バリデータありきのコンセンサスを有している(相互運用性の方法を参照のこと)。マルチチェーンは、作業ベースである必要はなく、たとえばPolkadotは、バリデータありきのコンセンサスを設定したマルチチェーンの方向に舵を切っている。(メモ:Polkadotは互換性のあるパラチェーン間にのみマルチチェーンを構築)

第3の問題:相互運用性へのアクセス – 参加条件

アクセスは、相互運用可能な技術が、チェーンを可能な限り低いエントリしきい値で組み込む能力によって定義できる。参加条件によって定義されるスペクトラムとしてよりも、そうみられているといえる。
理想的なのは、新たなプロトコル/チェーンが生まれたときに、追加のリソースやコアプロトコルを変更することなく、相互運用が可能なネットワークに参加できることだ。
一部の相互運用可能なネットワークでは互換性が必要なため、プロトコルレベルでメンバーチェーンを変更する必要がある(Cosmos/Polkadot)。主に公証スキームとマルチチェーンスキームは、メンバーチェーンのプロトコル層で変更を必要としないため、エントリのしきい値を下げるという点で優れている。とはいえ、ネットワークに新しいチェーンを追加するには、それぞれの相互運用可能なネットワーク上でコンセンサスが求められる。

  • 公証スキームは一般的にコンセンサスを必要とするが、新たなブリッジを実装するためにプロトコルの「フォーク」を必要としない限り、実装はシンプルになりうる。新しい一連のノードまたはサイドチェーン/ブリッジを形成することができる。
  • Block ColliderとPolkadotが提案したマルチチェーンは、チェーンがハードフォークを必要とするマルチチェーンプロトコルの一部であることを確認するために、コンセンサスと技術的バックエンドの作業が一部必要になる。

問題1および2で概説したように、バリデータありきのアーキテクチャを通じてトレードオフを行うことで、公証スキームは新しいスキーム(ブリッジ)の実装を効果的に行う。相互運用可能な新しいチェーンのしきい値は、マルチチェーンよりも比較的低くなる。

相互運用性チェーンの範囲と方法

本記事で述べてきたように、分散化を維持し、接続性を提供する能力において、異なる技術によって相互運用性が達成される程度は様々である。マルチチェーンおよび公証スキームはほとんどのチェーンと互換性があり、ネットワークをもっとも拡大することができる。メンバーチェーンに変更を義務づける相互接続可能なネットワークは、その提供が条件付きであるため、接続性の面で苦しむことになるだろう。以下の図は異なるプロジェクトとその範囲、そして相互運用性の実現方法を一覧にしたものだ。

図:相互運用性の方法

相互運用性とは、複数のチェーン間(クロスチェーン)作業が可能なこと、つまり相互の接続を実現するブロックチェーンの機能を指す。チェーン間の運用可能な接続性により、デベロッパーやエンドユーザーが、基盤として開発したり、交流しているベースチェーンを超え、複数チェーンネットワークからの利点を活用できる。現時点ではこの機能が、公証スキームや中継チェーン、ハッシュロッキングまたはマルチチェーンウェービングによって技術的に達成可能だ。次のインフォグラフィックは、こうしたメカニズムの基本的な構成をとらえたもの。

 

相互運用性の方法
公証スキーム 中継チェーン&パラチェーン チェーン間ハッシュロッキング マルチチェーン・ウェービング
信頼されたエンティティまたはそうしたエンティティの集団は、チェーン間運用を可能にするために、参加チェーンの状態を確認する仲介役として機能する。担当バリデータ集団は、たとえばトランザクションが有効であることを検証するために2/3バリデータノードを義務化するなど、BFTコンセンサスの何らかの方法を使用するかもしれない。

相互運用可能なプロトコル

相互運用性を促進するプロトコルチェーンは、チェーンBの状態(すなわち、チェーンB上の所定のイベントが発生したか否か、チェーンBに関する主張の真偽)に基づいて、チェーンA上のトランザクションを検証または拒否するバリデータ集団を提供する。

チェーンBの状態を確認する

パラチェーンが中継チェーン上のバリデータを介して相互運用するマルチチェーンコンセプト。パラチェーンはPolkadotネットワーク上に構築された独立したブロックチェーンで、中継チェーンはパラチェーン間のコンセンサスとトランザクションの流れを調整する。

各パラチェーンのコレータ(照合者)は、パラチェーン上のすべてのトランザクションを集約するが、これにはアウトプットキュー内のトランザクションの非セキュアブロックへの集約も含まれる。

サブグループXのバリデータは、相互運用可能なトランザクションを完了する次のコンセンサスのためにインプットキューを承認する。

各ブロックチェーンのハッシュタイムロック契約(HTLC)を利用して、仲介なしでP2P原子スワップを促進。そのようなスマートコントラクトの前提条件が、参加ブロックチェーンに次を義務付ける。
ー同じハッシュコントラクト
ー他チェーンと相互作用するための特別なプログラミング機能(まだ実験的)HTLCのエスクローメカニズムは、支払いの受領者が暗号証明による資金の受領を確認しなければならないか、または元の支払人に資金を返却するトランザクションを経費を没収しなければならない一定時間を提供する。
参加ブリッジチェーン(ビットコイン、イーサリアムなど)の集約ブロックを収集し、Block Collider上でそれらを1つのチェーンにまとめることで、相互運用性を実現するマルチチェーンコンセプト。 PoWのバリエーションであるプルーフ・オブ・ディスタンス(PoD)を使用して、他チェーンの状態を証明するためにバリデータを使う代わりに、トラストレスなコンセンサスに達する。

ブリッジチェーン特有のRoversは、常にメンバーチェーンの先頭にある新ブロックを探しているが、これはそれらのブロックをマイナーに中継するため。

マイナーは、消費されたブリッジチェーンブロックをBlock Collider上の1つのブロックへとマイニングする。

相互運用性は、他のブロックチェーンの状態を証明できるブロックチェーンの能力を指す。他チェーンの状態を知ることで、メンバーチェーン上でのアクションの証明を当然なものにでき、結果として相互運用可能な複数の機能を可能にする。 これは技術上、いくつかの方法で実現可能だ。

相互運用性プロトコル – 現在の風景

分散型台帳技術(以下DLT)空間をよく見てみると、一連のブロックチェーンプロジェクトの大半が、個別のサイロ状態で運用されていることがわかる。ブロックチェーン技術はまだ広く一般に普及していると言えないのが現実だが、成熟に向けて加速している現在、重要なインフラストラクチャレベルで欠かせないのは、ブロックチェーンからブロックチェーン、さらにはオフチェーンで旧世界システムへ、リアルタイムで情報を伝える能力だろう。ついでに言えば、私たちは、相互接続性によって生み出される価値のパワーと広がりを知るのに、インターネット創世記までさかのぼりさえすればいいのである。

現時点では相互運用する主な方法として、価値とデータのトランスファーを可能にするために、オラクルや中央集権型取引所などのツールを用いる。これらにはある程度のトラストが必要なことから、失敗の集中ポイントの存在余地を残している。やっかいではあるが、こうしたオプションは少なくとも私たちが、自由に異なるチェーンを使って、価値を取引することを可能にしてくれる。とはいえ、真にトラストレスなエコシステムの原則には一致しないので、問題は依然残ったままだ。サイロ間で価値やデータをトラストレスにトランスファーできるようにするにはどうしたらいいのだろうか?

2017年9月、チェーン空間に「原子スワップ」の考え方が導入された。これはおそらく第三者機関にトラストを委ねることなく相互運用性を導入した最初の例である。基本的にはハッシュタイムでロックされたスマートコントラクトを通じて実行された。関係当事者は、スワップされる通貨を一定時間内にスマートコントラクトに送る必要がある。基本的には、潜在的に失敗を犯す可能性のある第三者機関ではなく、プラットフォームがエスクローサービスとして機能するものだ。ここでの落とし穴は、アクションを実行するために第2者機関が必要であり、特定チェーンとしか互換性がない点だろう。

原子スワップの出現とチェーンの数の増加に伴い、相互運用の必要性がより明確になり、プロトコルはトラストレスな方法で壁を解決するという課題に取り組んできた。相互運用性に重点を置いた技術は次に要約できる。

  1. 公証スキーム
  2. リレーチェーンとパラチェーン
  3. チェーン間ハッシュロッキング
  4. マルチチェーンウェービング

これらの技術の詳細については、「相互運用性の方法に関するインフォグラフィック」を参照のこと。

下記の表は、どのプロジェクトが先述の技術を活用しているのかをまとめることで、現在の状況を表したもの。また、相互運用性技術のニュアンスをさらに明確にすることを模索し、接続性の達成を目指している。 これらニュアンスは次のように分類できる。

  • 1、相互運用性の道具
    • 価値トランスファー
    • データへのアクセス – メンバーチェーンの状態を把握する – つまり、別ネットワークをと比較したデータの証明、およびスマートコントラクトやアプリケーションが「把握」を効果的に活用できるようにすること。
      • プロトコルのデータの一部としてメンバーチェーンの状態を完全に把握(トラストレスかつ恒久)
      • バリデータによる検証に基づいて状態を検証(バリデータ検証に基づいたトラストが必要)
  • 2、相互運用性の方法
    • 中央集権型ハブ
    • バリデータベース(バリデータ、第三者機関による検証)
    • 作業ベース(検証にバリデータの必要なし)
  • 3、相互運用性の限度
    • 条件付きの参加 – スマートコントラクトが必須またはコアプロトコルの変更が必要
  • 4、ネットワークに参加しているメンバーチェーンに対し、一部のプロジェクトが提供している追加のユニークな機能:
    • スケーラビリティと共有セキュリティ – 相互運用性のコアな必要事項ではないが、メンバーチェーン自体のドメインであるべきなので、PolkadotおよびCosmosがこのサービスを提供する範囲は小さいと認識されるべきだ。

 

相互運用性のプロトコルー現在の風景|SPEC-R
特徴 Block Collider Polkadot Cosmos Ark ICON Wanchain Aion Cardano
コンセンサスアルゴリズム PoD(プルーフ・オブ・ディスタンス) DPoS(委任プルーフ・オブ・ステーク) Tendermint BFT(ビザンチン・フォールトトレラント性) DPoS(委任プルーフ・オブ・ステーク) LFT (ループ・ファオールトトレラント性) PoS(プルーフ・オブ・ステーク) DPoS(委任プルーフ・オブ・ステーク&PoI(プルーフ・オブ・インテリジェンス) Ouroboros PoS (プルーフ・オブ・ステーク)
相互運用性技術 マルチチェーンウェービング 中継チェーンとパラチェーン/パラチェーンのマルチチェーン 公証スキーム 公証スキーム 公証スキーム 公証スキーム 公証スキーム 公証スキーム
バリデータ なし あり あり あり あり あり あり あり
バリデータの数 なし ホワイトペーパー参照 100人(Cosmosハブ) 次の10年で13%増、最大300人 51人の委任者 ホワイトペーパー参照、最大数は未定 非結合 ホワイトペーパー参照、最大数は未定 非結合
相互運用性のキーワード Collision (PoD)が一つのチェーンにマイニング パラチェーン(メンバーチェーン)
ブリッジチェーン(互換性のないチェーン用)
CosmosハブとZones(メンバーチェーン)
ペグゾーン(互換性のないチェーン用)
スマートブリッジ
Listener Nodesのエンコード(既存チェーン)
Icon Republic & Communities
ノードが目撃者として振舞う時
チェーン間トランザクション・データトランスミッション。
トランスミッション・モジュールではノードが目撃者として振舞う
サイドチェーンの一形態において、からのネットワークとブリッジを接続 サイドチェーンの一形態において、連合したブリッジ
チェーンの参加条件
価値トランスファー はい はい はい はい はい はい
アセットのポータビリティのために追加でデザイン
はい はい
データへのアクセスーメンバーチェーンの状態 プロトコロルデータの一環として、メンバーチェーンの完全状態を把握 プロトコロルデータの一環として、メンバーチェーンの完全把握状態(ブリッジチェーンは例外) バリデータによる検証を基にした状態の検証 バリデータによる検証を基にした状態の検証 バリデータによる検証を基にした状態の検証 バリデータによる検証を基にした状態の検証 バリデータによる検証を基にした状態の検証 バリデータによる検証を基にした状態の検証
メンバーチェーンのためのスケーラビリティ 提供せず ソリューションを提供、ブリッジチェーン活用チェーンには提供せず ソリューションを提供、ブリッジチェーン活用チェーンには提供せず 提供せず 提供せず 提供せず 提供せず 提供せず
メンバーチェーンのための共有セキュリティ 提供せず ソリューションを提供、ブリッジチェーン活用チェーンには提供せず ソリューションを提供、ブリッジチェーン活用チェーンには提供せず 提供せず 提供せず 提供せず 提供せず 提供せず