Original Article : The Blockchain Intersection with Supply Chain Data
Posted on October 12, 2017 by Jennifer Zaino
おそらくほとんどの人は、ビットコインに関連してブロックチェーンを知っているのではないだろうか。ブロックチェーンは確かに世界的な仮想通貨とデジタル決済システムを支える基盤テクノロジーだが、サプライチェーン上のデータ管理にも応用できるものだ。
実際、今年9月中旬に、IBMとマイクロソフトが、流通コードの管理および流通標準に関する国際機関「GS1」と共に、サプライチェーン顧客向けの「Enterprise Blockchain」アプリケーションにおいて、その識別・構造化データの標準を活用すると発表した。その目的は、ブロックチェーンのネットワークユーザーが、サプライチェーンとロジスティックス上の出来事に関して、共有される唯一の真実を採用・維持をできるようにすることであり、その結果、取引業者間におけるデータの整合性および信頼を高め、データの重複と照合を少なくすることができる。
つまり、ブロックチェーンの分散型台帳というコンセプトを新しい目的に適応させ、バイヤーとサプライヤー間のスマートコントラクトの契約主となるということだ。 GS1 USの企業開発担当バイスプレジデントのMelanie Nuce氏は、「アイデアとしては、歴史的に人間がこれまで担っていたやり取りを取り出し、その背後に自動化を施すということです」と語る。
ブロックチェーン・ネットワーク上の十分な数のノードが、サプライチェーン契約の条件が一連の規定に従って執行されていることに同意した場合(つまり取引が承認されるためにアクションX、Y、Zが発生した場合)、取引データが台帳に追加され得る。そうでなければ追加されることはない。
たとえば、サプライヤーの出荷がPOで指定された出荷余裕日から外れた場合、承認に必要な条件が満たされておらず、現行規定の下で取引が検証されないという通知が、企業やロジスティックス・ベンダーに送信される。「契約条件を満たしていないと、台帳に取引を書き込むことはできません」とNuce氏は言う。これはビットコインのブロックチェーン・ネットワークに似ている。バイヤーとのトランザクションを締結するために必要な数のビットコインが、セラーのアカウントにないと判断された場合、トランザクションの有効性が検証されない仕組みだ。
これは交渉プロセスから人間を外してしまうことではなく、むしろサプライチェーンの末端にいる取引業者の保護を実行・促進することを意味する。小売業者のサプライチェーンでは、取引業者間に起きた事案を解決するのにしばしば数カ月を要すため、特定のブランドが在庫切れになったり、取引が未払いになったりするという問題を抱えている。取引上の調整プロセスなどで、「分散型台帳とスマートコントラクトという概念は、ものごとの効率化に役立つはずです」とNuce氏は語った。
サプライチェーンのブロックチェーンをマッピングする
GS1は、世界規模で独自の商品ID(たとえば衣料品のサイズ、色、スタイルなどを特定するUPCバーコード)を基盤にして展開している。同様にデータ構造を設定するための値定義を提供するGS1 Core Business Vocabularyを用いた、独自のElectronic Product Code Information Service (以下EPCIS)を介して、標準化されかつ物理的なイベントベースのデータ共有層でも展開している。
ブロックチェーンというコンセプトと共に、複数のサプライチェーン当事者、たとえばキャンディー商品を製造する消費財メーカー(CPG)、商品を倉庫に輸送する運送業者、そして商品を受け取る小売業者が共通言語で会話し、GS1の標準化語彙を用いて、分散型台帳上のトランザクションの各段階に貢献できるようになった。
たとえば運送業者は州境を越え、倉庫への配達予定が3時間以内であることを記録できる。「相手先の小売業者は、別のテクノロジー・ソリューションを使用するかもしれませんが、すべての人が速やかに台帳上の記録を読んで、連絡し合うことができるようになります」とNuce氏。取引業者間でこのビジネス世界言語を活用して、より分析的な方法で動くのに役立つ、サプライチェーンのインテリジェンス・データを収集することができるのだ。
ブロックチェーン以前は、こうした取引が関係者全員に透明というわけではなかった。サプライヤーが製品を運送業者に渡したはいいが、小売業者は移動中の製品がどこにあるのかを必ずしも把握してはいない状態だったのだ。Nuce氏は、「そこにはいつも視界をさえぎる雲があったのです。ある取引をめぐり、すべての取引業者がエンドツーエンドのトレーサビリティを確保できるよう、その雲を取り払うことが可能だと我々は考えています。」
ブロックチェーンが提示できるもうひとつの重要な側面は、分散型台帳が改ざん不能だということだろう。 ひとたび取引が台帳に書き込まれたら、それは恒久的なものとなる。あらゆる争いを解決するために、監査証跡がそのままの状態で残っている。
参加している大手テック企業
IBMやマイクロソフトのような企業が行っているのは、取引業者の承認や許可の概念などと共に、一連のブロックチェーン展開の周辺に企業レベルの機能を携えることだ。
たとえば企業がこれを展開する際に、将来のある時点でブロックチェーン自体がチェーン外データの証明になる可能性が非常に高いと思われる。
マイクロソフトはたとえば、恒久的なIDを確立し、それらをどのようにして取引を書き込む能力に結びつけるのかについて、膨大な時間と労力を費やしてきた。
また、すでにIBMとウォルマートは食品安全の確保ために豚肉やメキシコ産マンゴーを追跡するブロックチェーンのサプライチェーン・イニシアチブで提携。マンゴーに関する実験については、フォーチュン誌が次のように報じている。
その結果、食品媒介の疾病が発生した場合、わずか数秒でこれらの情報をとりだすことができるため、小売店が感染拡大を防ごうと店内のマンゴーを全面的に撤去するのではなく、影響を受けたものだけ排除することができるようになる。8月にIBMは、ブロックチェーンの助けを借りて食品汚染を減らすため、ネッスルやユニリーバほか食品メーカーと提携することを発表した。
このようなパイロット版の成功は、「幻滅ポイントを迂回し、一気にほぼ全面的なブロックチェーン採用のために、エンドユーザーやテクノロジー、標準を一体化させることは可能」だという希望をGS1に与える理由になっている。Nuce氏は言う。 「私たちの役割は、その他多くのユースケースでそうあるように、基礎データ共有と独自のIDのプロバイダーたることです。」
Nuce氏はまた、GS1データ標準を活用したブロックチェーンのサプライチェーン展開から派生する消費者のための付加価値も予見している。ユースケースには、製品の出所に関するデータへの消費者のアクセスなどが含まれることになるかもしれない。
筆者:Jennifer Zaino
Jennifer Zainoはニューヨークを拠点にし、ビジネス&テクノロジーに関するジャーナリズムを専門とするフリーライター。 主要なテクノロジー関連出版物のInformationWeekで受賞歴のあるニュース部門を率いるエクゼクティブ・エディターでもある。また、レビュー専用版や分析レポートを含むオンライン・コンテンツ戦略の開発を手がけるNetwork Computingdでも、エクゼクティブ・エディターを務める。その他、The Semantic Web BlogやRFID Journalへ定期的に寄稿したり、Smart Architect Smart Enterprise Exchangedでもエクゼクティブ・エディターとして活躍。ほかEdTech(K-12 and Higher Ed)、Ingram Micro Channel Advisor、CMO Site、Federal Computer Weekなどの出版物やウェブサイトにも記事が掲載されている。