米国で30年ぶりの税制改革が実現〜仮想通貨への課税にも来年早々から影響か〜

12月22日にドナルド・トランプ大統領が税制改革法案に署名し、30年ぶりに米国の課税制度が変わることになりました。中間所得層の減税を謳う新税法ですが、反対派は企業と高所得者層に有利な税制であると強く反論。どちらが真実であれ、来年1月1日から適用されることになります。

そこで今回は、この新税制が米国における仮想通貨資産に対する課税にどのように影響するのか、日本の課税制度なども引き合いに見ていきたいと思います。

ビットコインの現時点の状況

ブルームバーグによると、21日の時点でビットコインの価格は、一足お先のクリスマスセールとばかり、同日に30%以上下落しています。そのほかの仮想通貨も同様で、イーサリアムが36%、ライトコインは43%の下落。仮想通貨が今年最後のチャレンジに直面していると同サイトは報じました。

一方、同日付のウォールストリートジャーナル紙によると、「謎のトレーダー」がビットコインの価格は来年中に現在の約3倍にあたる5万米ドルに達すると予想して、大きな賭けに出たそうです。ビットコイン取引所LedgerXが公開したデータによると、来年12月に期限切れとなるコールオプションに100万米ドルが支払われました。

新税制はコイン投資家にとって悪いニュース

ビットコインの価格の行く末については各方面、個人で意見が別れるところですが、2010年当初の値が1セントにも満たなかったビットコインの価値は、それでも現在1万3000米ドル。所有者のキャピタルゲインがかなりの額なる可能性は大いにあります。

新税制と仮想通貨の関係に話を戻します。同じく21日付のブルームバーグによると、新税法にはこれまで非課税とされてきた仮想通貨同士の交換で出た利益が、課税対象となる条項が含まれているそうです。つまり、来年1月1日からさっそく、株や不動産などの資産を売買した際に出る利益に対する税金「キャピタルゲイン税」が課されるようになるというわけです。

ビットコインとイーサリアムなどの仮想通貨を行ったり来たりしている熱心な投資家たちの多くにとって、これはひとえに「悪いニュース」。一つの仮想通貨をほかの仮想通貨へ交換するたびに税金がかかることになるからです。

似た者同士の物々交換は非課税だった

現在の税法にはいわゆる「似た者同士の物々交換」によるキャピタルゲインは据え置き可、という条項がありました。たとえば不動産同士、アート同士、競走馬同士、プライベートジェット同士などの間が対象で、期間は180日以内とされています(これらの例を見る限り、高所得者層のための節税抜け穴条項という感じでいっぱいですが)。

1921年に制定されたこの条項が株や債券ほかの有価証券に適用されてきたことはありません。これまで仮想通貨の取引はこの「似た者同士交換は非課税」条項のグレーゾーンだったのですが、共和党の新税制ではその対象が、はっきりと国内の不動産に限られることになります。

これにより、仮想通貨の交換も来年1月1日からさっそく「取引時に課税対象となる」(Steptoe & Johnson LLPのLisa Zarlenga税理士)とみられています。キャピタルゲイン税の対象になれば、所有期間が1年未満の短期の場合で最高35%、それ以上の長期の場合で最高23.8%の税金が課されます。

ちなみに日本の場合は…

ところで日本はどうなっているかというと、仮想通貨取引で得たすべての利益が、原則として雑所得に区分され課税されます。つまり、ビットコインとモノ、ビットコインと法定通貨、ビットコインとその他の仮想通貨のどれについても、利益が出れば税金がかかります。12月1日に国税庁が発表した「個人課税情報」第4号の、その名もずばり「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」により、課税対象となることが確定しました。

仮想通貨同士を交換した場合の利益は為替差損益と同等とみなされ、雑所得に区分して課税されます。ですから先物取引や外国為替取引などと同様に、1年間で20万円を超えた分については確定申告をしなければなりません。今月初めの発表まで、国税庁は仮想通貨取引で得た利益が雑所得に該当するか明確に示していませんでした。

…期せずしてではありますが、日米ほぼ同時期に「仮想通貨同士の交換にも課税」で足並みがそろった格好です。

米国でも課税は長期にみればいいこと?

2014年3月に米内国歳入庁(IRS)は税収の目的から、仮想通貨を通貨ではなく、金や不動産のようなプロパティであると宣言しました。つまり、キャピタルゲイン税の対象になるということです。

会計事務所PLASCIKでインターナショナルな税管理部門を率いるRyan Losi氏は、より明確な規制は、デジタル資産がメインストリームでより簡単に受け入れられるようになることを意味すると指摘しました。

ブルームバーグの記事は、同様に新税法が仮想通貨に関連する為替取引ファンドの上場に対する関心をそいでしまうようなこともないだろうという、GraniteSharesのCEOであるWilliam Rhind氏のコメントで記事を結んでいます。同社は先週、ふたつのビットコインETFを上場する認可を申請した投資会社です。

さて、日米の仮想通貨の投資家にとっては短期的に手痛い課税ですが、仮想通貨全般の主流化という効果が、長い目で見たときにはたして本当に期待できるのか…今後も注目していく必要がありそうです。


https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-12-22/bitcoin-plummets-toward-13-000-down-more-than-30-from-record

https://city.wsj.com/articles/84a5dffa-f823-4b82-9d33-042489a6b9d2

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf