今年1月26日に仮想通貨両替所コインチェックがハッカー攻撃を受け、史上最大級の仮想通貨流出事件が起きたことを受け、従来の中央集権型取引をめぐる懸念を表した記事が、ブルームバーグでも28日、29日と立て続けに掲載されました。いずれも、今後は関係当局による規制強化の流れと分散型の仮想通貨取引を求める動きに拍車がかかるだろうという論調です。
コインチェックの事件後、メインストリームの媒体で現行システムが内包するリスクについて語った記事はいくつもありましたが、分散型取引にまで踏み込んだ記事は、ブルームバーグやウォールストリートジャーナル紙など一部にとどまっています。

そこで今回は、事件直後から今月に至るまで関連記事を定期的に掲載しているブルームバーグに注目し、仮想通貨取引をめぐる見解/トーンについてまとめてみたいと思います。

中央集権型仮想通貨両替所に対する当局の規制

コインチェックのような事件が起きるたびに動きが活発になる「規制」は、当然各国で対応が異なります。
デジタル資産取引の政府による監督めぐり、ライセンス制を導入した日本、一度は仮想通貨分野の世界的な中心地となりながら、もっとも厳しい取り締まりに乗り出した中国、仮想通貨のハブとしてみずからを確立しようとしている地中海のマルタ共和国など、仮想通貨に対して温度差があるのです。

中央集権型両替所の何が問題なのか

もう一つ活発になるのは両替所のシステム改善の動きです。セキュリティ上の懸念から求められている新タイプの仮想通貨両替所は、分散型両替所(De-centralized Exchange-DEX)。これへの注目度が高まるなか、BLOCK RABBITでも近ごろ主要分散型両替所の一覧をまとめた記事「DEX(De-centrized Exchange) のまとめ」を公開し、その冒頭で中央集権型両替所の問題点にも触れています。

ブルームバーグの記事でも指摘されているのですが、中央集権型仮想通貨両替所と従来の証券取引所に共通するのは、資産をトレードする場所として機能しているというところのみ。中央集権型仮想通貨両替所は投資家の資産も保有しています。つまり取引所と銀行両方の役割を果たしているのです。1月28日付のブルームバーグに掲載されたTom Culpanの記事「Crypto Trading Needs a New Model」で引用されている表によると、中央集権型両替所が所有するわずか10数前後の「ウォレット」が、数千ものビットコインを保有しているということです。

同記事の論調としては、システムは中央集権的で勢力図も独占的、セキュリティが破られたり、両替所自体が倒産すれば、投資が全て失われるという危険をはらんでいるだけでなく、その損失額も膨大になる可能性が高いから、とにかく現状のままではリスクが高すぎるというもの。当局の介入か、新しい取引形態が仮想通貨には必要だ、です。

求められる分散型の解決策

記事が掲載されたのは、コインチェックの事件が起きてから2日後。分散型両替所の必要性をCulpanは指摘しています。サブタイトルの部分は、中央集権型がどのように機能しているのか人びとが全く理解せずに利用している、と警告調です。
自分が利用している両替所に仮想通貨をそのままおいておくのが非常に一般的になっているリスクの高い現状を指摘し、中央集権型はスピードやサポートなどから、カスタマーエクスペリエンスでは分散型より優れているけれど、やはりセキュリティ上の懸念から、ユーザーが分散型に移行していくのは時間の問題だと断言しています。

翌日付のOlga Kharifによる記事「Record Cypto Heist Raises the Appeal of a New Type of Exchange」でも、まずは中央集権型両替所で起きた諸事件と原因を総ざらいし、分散型両替所について、たとえばすでに稼働中のAirSwapやEtherDeltaなどの名を具体的に紹介。利用者は秘密鍵で自分のアカウントにアクセスし、仲介者なしのP2Pで直接トランザクションを実行するという、中央集権型と大きく異なる点について解説しています。

今月6日付の記事「New Crupto Exchanges Don’t Want (to Hold) Your Money」でもそのタイトル通り、新世代の両替所として分散型を紹介した上で、顧客の資産を保管しないという決定的な違いについて解説。運営形態の透明性が高い点も指摘しています。仮想通貨取引の未来は分散型なのかという問いには、分散型両替所へのユーザー大移動がクリプト界で今年最大の話題になるだろうという、先述の分散型両替所プラットフォームAirSwap(今年4月に開設)のストラテジストSam Tabarの言葉をまず紹介。
いっぽう、シンガポール・フィンテック協会のChia Hock Lai会長は、ユーザーエクスペリエンスやテクニカルサポートの低さを指摘し、『the Handbook of Digital Currency』の著者David Lee は5〜10年の間に分散型が主流派になるだろうと予測しました。

分散型両替所の成長に死角はないのか?

このように、分散型が遅かれ早かれ仮想通貨取引の未来になるという点で、ブルームバーグの一連の記事は見解が一致しているようです。が一方で、先述のKharif(1月29日付)の記事では、今年12月に分散型両替所のEtherDeltaサイトがハッカーにハイジャックされたことにも言及し、分散型も少なくとも現時点では必ずしもセキュリティにおいて完全防弾型ではないと指摘しています。ハッカーが同サイトをのっとって偽物バージョンに置き換え、ユーザーの資金が盗まれた事件です。
そして、分散型両替所はユーザーの身元を検証しないので、資金の回復がより困難であるという現実があります。記録が改ざんできないようにデザインされているのがブロックチェーンなので、後戻りができないからです。

それでも未来は分散型両替所とともにある

Kharifの記事ではこうしたダウンサイドに言及しながらも、取引量の大半が分散型両替所で行われる日が来る可能性は高いという専門家のコメントを紹介。Digital Asset ResearchのアナリストLucas Nuzziは、ただその前に、Decentralized Autonomous Organizationsの規制や課税、保険問題が解決されなければならないとしています。とはいえ、すでにこうした分散型両替所を通して、数百万ドル規模の取引が行われている現状には驚きを禁じ得ないとNuzzi。去年の秋以降Oxと呼ばれるテクノロジーを使った分散型両替所が7つもローンチしており、このあとも5つが予定されているそうです。分散型両替所の関係者たちも、やはりハッキング問題がこの流れに拍車をかけているのは間違いないとみているようです。

同記事内で、1日に最高で3万5000件の分散型トレーディングを取り扱うShapeShift広報担当者のコメントが引用されています。同社は2016年にハッキング被害にあいましたが、ユーザーの資金が盗まれることはありませんでした。「あれは当社の顧客への説明に使える非常にいいユースケースでした。『ハッキングはされたけど、誰もその影響を受けませんでした』というね。」ちなみに同社は、ハッキング対策として従業員の名字の公表さえ禁じているのだそうです。

そして中央集権型両替所最大手Binanceも分散型に乗り出す

CoinMarketCap.comのチャートによると、仮想通貨取引はトップ13の中央集権型両替所が総取引量の約40%を扱っています。そのトップが8.7%を占めるBinanceです。ブルームバーグ3月13日付の「Biance Decentralized Exchange to List Almost Any Coin, CEO Says」で、Bianceが今年中のローンチを予定している分散型両替所Binance Chainについて、創設者兼CEOのChangpeng Zhaoへのインタビューを紹介しています。

それによると、同社の中央集権型両替所とは対照的にコントロールは極力せず、誰もがコインをリストできるという、分散型両替所の哲学に沿ったものになるといいます。ただしブロックチェーンの性質から、多数のコンピュータがトレードを検証・記録するためのデータ処理能力が必要となるため、中央集権型よりスピードが遅く、手数料も高くなるとしています。それでもスピードや流動性より、匿名性とセキュリティにより価値を置く人びとに響くに違いないという見通しを持っているようです。

まとめ

以上、1月末から今月までにブルームバーグサイトに掲載された、分散型両替所に関する記事の内容をみてきました。メインストリームの他媒体とは異なり、かなり分散型両替所というオルタナティブな未来に踏み込んだ論調が展開されていたのが印象的でした。ブルームバーグがこれだけ関連記事を発信しているということは、今後ウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズのような媒体が、この分野について論じるのも時間の問題かなという気がしました。コインチェックの事件前から開発やローンチが進んでいた分散型両替所の分野ですが、被害額のあまりの大きさに一般社会さえも大変な衝撃を持って受け止めた事件をきっかけに注目が集まり、資金や関心の流れ込むスピードが加速していくであろうことは間違いないようです。

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