仮想通貨の次に、非中央集権的な金融を可能とするDeFi。この発展途上のシステムは、多くのハッカーの狙いの的となっている。先月19日には、CNBCがDeFiの盗難被害総額は2021年だけで120億ドルに上ると報道した。スマートコントラクトにより、仲介者を必要としないDeFiは文字通りプログラム通りに動き続けるため、ひとたび欠陥がみつかればハッカーたちは安全に、身体的危険を伴わない強盗が可能となる。
そのDeFiからの窃盗に悪用されているのが、Flash Loan(フラッシュローン)というDeFi特有の取引である。今回はフラッシュローンが何なのか、その仕組みをみていく。
フラッシュローンの仕組み
DeFiは、資金が余っている人から集めてプールし、資金が足りない人へと貸し出す。そして資金を提供している側は、流動性をプラットフォームに与えている報酬として、一定の報酬を仮想通貨やトークンの形で得る。ここまでは従来の銀行と果たしている役割に大差はない。しかし、普段銀行で家の購入などで大きな金額を借りようとした場合、すぐにそのお金を借り入れることは不可能だ。
従来の金融機関はその人のプロフィールや仕事内容、預金状況や過去の借入履歴などを精査して、初めてローンを提供するかどうか決める。そしてこのプロセスには通常数週間を要する。
しかしDeFiはこのような時間のかかるプロセスを全て省き、大きな金額の借り入れを可能とするサービスがある。それがフラッシュローンだ。フラッシュローンでは審査などのプロセスがない代わりに、一回のスマートコントラクト内で借り入れと返済の取引両方を完了させることで、資金の借り逃げを防いでいる。
どういうことかというと、フラッシュローンでは、資金を借りた数秒後にはその資金をDeFiプラットフォームに返済しなければならない。そしてもしその数秒間の間に資金が返済されなければ、スマートコントラクトは自動的に取引を取り消し、資金のやり取りが発生する前の状態へと、DeFiと借りる側のウォレットを逆戻しする。これが可能な理由は、借り入れと返済が一回のスマートコントラクト内で行われる為、借り入れと返済の両方が完了しないと、取引自体がブロックチェーン上に記載されないのだ。つまり、資金がDeFi側に戻ってきて、初めて借入者もその資金を借りたという事実が発生する。
フラッシュローンの意義
では借りてすぐ返すフラッシュローンは何の意味があるのだろう。一つはアービトラージという利益を得るトレード法にフラッシュローンは利用される。アービトラージとは同じ商品が市場によって値段が違う際に、その値段差から利益を得るトレード法である。市場Aで10円、市場Bで11円の商品があれば、市場Aで商品を買って市場Bで売ることで、ただ売買を行うだけで、1円の利益を得られる。
フラッシュローンでは、借入者は無担保で資金を借りられる為、フラッシュローンで大金を借りてアービトラージを行うことができる。DeFiから資金を借りた瞬間に、複数市場で取引を行い、利益を生む。そしてアービトラージを行った後、借り入れた分をDeFiプラットフォームに返して、フラッシュローンを完了させる。これにより、取引者は資金が無くても、利益を出すことが可能となる。
このようにしてフラッシュローンは利用されている。しかし、無料で資金を貸し出すわけではなく、借入者は0.09%ほどの手数料をDeFi側に支払わなければならない。その手数料を含め、もし返済額が足りなければ全ての取引はリバースされてしまう。
これがフラッシュローンの仕組みである。しかし、この取引の重大な問題は、そのフラッシュローンが行われている数秒間は、その資金で何でもできることである。スマートコントラクトは最初の借入額と最後の返済額とで整合性がとれていれば、あとは何も気にしない。そして、その数秒間で様々な不正な取引を行うことでDeFiからの資金の窃盗が起きている。次回はその資金がフラッシュローンを通して盗まれる仕組みについて解説する。
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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。