Posted on Jan 27, 2018 by Kyle Samani
今にち、ブロックチェーンの相互運用性は事実上存在していない。
チェーン間で価値を移動したい場合は、トークンを中央集権型の取引所に移動し、取引所内の台帳で取引し、新しいアセットを新しいチェーンから引き出す必要がある。 このプロセスは遅くて費用がかかり、相当なカウンターパーティリスク(取引相手の倒産リスク)を伴うものだ。
基本的にチェーンの相互運用性についてはふたつのタイプがある:
- あるチェーンの状態に関するメッセージを別のチェーンにつなぐ。これには、合成トークン(1対1ペグ、双方向ペグ、またはサイドチェーン)が含まれる。
- チェーン間の原子交換。 第三者機関にたよらず、チェーン間でユーザー同士がトークンを交換する。
Polkadot や Cosmos のような有名なプロジェクトの多くは、メタ「ブロックチェーンのブロックチェーン」を目指している。これらシステムは、それぞれのネットワークの作業を実行するために、バリデーターが提供すべきネイティブステーキングトークンを持っている。
もうひとつのチェーンのチェーンBlock Colliderは、似たようの機能の多くを実現するため、根本的に異なる技術的メカニズムを提案した。
ブロックチェーンの相互運用性に関するVitalik Buterin氏の優れたレポートの洞察を基にして、前述した両方の機能を説明し、かつこれらのシステムにとって最大のチャンスはメッセージのリレーであることを解説していくことにする。チェーン間の原子スワップは、チェーンシステムの専用チェーンなしで、トラストレスに達成可能だ。
チェーン間のメッセージング
チェーン間のメッセージングは基本的にトラストの問題だ。チェーン間でメッセージをトラストレスにつなげるシステムをどう設計すればいいというのか?
これは「孤立チェーンリスク」のことを考えると、とりわけ困難だといえる。仮にあるサービスがチェーンAの状態をチェーンBにつないだとして、中継者が(親切に、あるいは意地悪く)最終的に孤立状態であるチェーンAのフォーク上にいたことが判明した場合、チェーンBへリレーされたメッセージは無効だ。
チェーン間を超えて合成トークンを発行するためのメッセージを中継している場合、これはチェーン間の二重支出となり受け入れられない。永続的な「中継者が孤立フォーク状にいたらどうなるだろう」というリスクに順応することは、メッセージ中継システムにおける最大の難題だろう。
CosmosとPolkadotは、2つのメカニズムによって孤立チェーン問題を解決する。 まず、インターブロックチェーン・コミュニケーション(IBC)プロトコルを使用して、チェーン間のトランザクションごとにマークル化されたブロックヘッダーを格納する。 マークル化されたブロックヘッダーの歴史を踏まえ、CosmosとPolkadotは、各トークンの総供給量のグローバルに不変なバランスを維持する。 これらのメカニズムで、ともにチェーン間の二重支出を防ぐというわけだ。
Oraclizeのようなシステムがチェーン間でメッセージをつなぐことができれば、それはすばらしい。しかし、この手のシステムは、孤立したチェーン問題の原因ではない。
将来的に孤立したチェーン問題が、送信チェーン自体により解決される時を想像することは可能だ。PoSベースのシステムでファイナリティ(決済の確定)を活用することによって…。これは現在アルファ段階にあるCasper FFGの明確な目的でもある。しかし、このようなPoSシステムのパラメタリゼーションにおいて、実際のところどれくらいの早さでファイナリティがトレードオフを得られるのかは不明だ。
ファイナリティの保証があってもなお他の課題がある。
私たちは現在、ブロックチェーン技術革新のカンブリア爆発を目の当たりにしている。今後最低でも数年間は継続する可能性が高い。新たに出現しているチェーンの数を考えれば、各チェーンは通信するその他すべてのチェーンのマークル化されたブロックヘッダーを格納して検証する必要がある。
各ブロックチェーンは、他すべてのチェーンのブロックヘッダーで膨れ上がる可能性がある。ブリッジチェーンを使用すると、チェーンごとの膨らみがn! 関数からn関数に減る。
ブロックチェーンが中間チェーンの介在なしで互いに直接通信する未来をみたいものだと思うが、これはほとんど起こりそうにない。この問題は、ビットコインなどのシステムが、決してPoWコンセンサスから離れて、ファイナリティが保証されたPoSコンセンサスに移行することはないだろうという事実からきている。
あまり突き出てしまうと、中間チェーンが余計になる可能性はあるようだが、行く末はそれでもまだ不明だ。近い将来、少なくとも数年の間は、CosmosとPolkadotがチェーン間メッセージングを支える基となるためのリアルな機会を持っているといえる。
チェーン間の原子スワップ
最近、LitecoinとDecredの間で、はじめてのチェーン間原子スワップが発生した。
これらは、Turingが完全なプログラミング言語をサポートしていないチェーンだ。 チェーン間の原子スワップは、汎用スマートコントラクト・プラットフォーム間で技術的に実装する方が容易だ。これらのライブラリーが成熟して広く採用されるにはさらに1〜2年かかるだろうが、必ずそうなる。 技術的な疑問はそう多く残っていない。
チェーン間の原子スワップのもう1つの大きな課題は、価格発見と注文照合だ。 それで、0xやOmiseGoなどの分散型仮想通貨取引所(DEX)が活躍する。OmiseGoは完全に分散化されている。つまりオーダーブックがチェーン上にある。
0xでは、注文は中継者(中央集権型エンティティ)にホストされ、そこで決済のためにマッチした注文をチェーンに出す。
市場が最終的にDEXの完全な分散化を要求している(チェーン上のオーダーブックを含む)場合、チェーン間の原子スワップが機能するためにはOmiseGoのようなシステムが必要だ。しかし、チェーン上のオーダーブックの本質的な限界(決済時間、マイナーのフロントランニング、マイナーのグリーフィング=嫌がらせなど)を考慮すると、近い将来には0xモデルが先を行くと私は確信している。
0xは現在、イーサリアムのエコシステム内でしか動作しないが、0xロードマップにはチェーン間サポートが含まれている(ScryptベースチェーンのためのLitecoin-Decred概念実証(POC)に組み込まれた技術を多く活用するだろう)。 0xの中継者は価格発見のためのオーダーブックをホストし、チェーン間のメッセージを中継して、各チェーンのエスクローからの資金放出を引き起こす。 これは、(実際には中継者のみが両方のチェーンにメッセージを中継しているという)最小限の信用保証で、分散型(カウンターパーティーリスクなし)と中央集権型(スピード、注文マッチ)の最高要素を数多く提供するはずだ。
チェーン上のDEXは理論的に可能だ。
しかしながら彼らが直面している限界を踏まえて、オーダーブックにおける流動性の内的ネットワーク効果、市場投入までの時間と市場進出の利益、そして0x 中継者の最小限の信用保証により、私は0xモデルの勝利を確信している。 Cosmos / Polkadot / Block ColliderベースのDEXに残されたチャンスはほとんどないといっていい。
結論
Cosmosのローンチが1〜2カ月後にせまるなか、私たちはブロックチェーンのインターネット機会についての誇大広告サイクルを目の当たりにしている。Cosmosのようなシステムなら、根本的なチェーン間コミュニケーション問題は解決できる。が、必ずしもすべてのチェーン間コミュニケーションが抱える難題の答えになるとは限らない。
これらのシステムすべてが、実際に「チェーンのチェーン」によって実行されなければならないわけではないと認識することがもっとも重要だ。暗号エコシステムが進化するにつれて、信用モデルや中継者、ソリューションのもっと広い多様性が期待できるはずである。