クリプト訪ねて三千里:第962話
NFTはなぜ唯一無二なのか。ERC-721とは?

 皆さんはNFTという言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。NFTとは”Non-Fungilbe Token”の略で、日本語では非代替性トークンと呼ばれる。最近では多くの著名人がNFTを所有していることを発表したり、スポーツ界でもNFT商品が生まれたりと、今ホットなNFTだが、一体何がそんなに特別なのだろうか?

 

そもそもNFTとは?

 NFTは一言で表すと「唯一無二のデジタルデータ」である。世界がアナログからデジタルへ移り変わった際の最も大きな利点は、コストと時間の短縮だ。デジタルなデータであるため、複製可能で、物理的距離を無視して瞬時にそれらのデータを共有できたことである。これによる弊害は、デジタルなものはコピー可能であるがゆえに、「固有の」価値を持つことができなかったことだ。つまり、オンリーワンのデータなるものが存在しなかった。

 

 しかしそこにNFTが誕生した。データであるため、瞬時に世界中どこでも誰とでもやり取りできると同時に、コピーできない為多くの人が自分の持つデジタルコンテンツに価値をもたらすことができるようになった。

 

 ここまでは多くの人が知っていることかもしれない。ただ、どうやってこのNFTがデータでありながらその代替不可能性を保っているのか知っている人は少ない。ここではNFTが結局どうやってオンリーワンのデータとなっているのか、技術的な観点から見ていく。

 

スマートコントラクト

 まずNFTというのはスマートコントラクトを通じて誕生する。スマートコントラクトとは、特定の条件が満たされると自動で取引を行うプログラムのことだ。一番有名なのはイーサリアムで、現時点でも大多数のNFTはこのイーサリアムブロックチェーン上に存在する。この自動化により、実は一般人でも簡単に自分のNFTを作ることが可能になっている。

 

 NFTがつくられ、オンチェーンとなった場合(ブロックチェーン上に記録された状態)、この時点でNFTは、不正にコピーしたり盗むことが不可能となる。なぜなら、ブロックチェーンとは、無数のバリデーターが集まって運営しているシステムだからだ。NFTをどこかから自分の手元に盗みたければ、ブロックチェーンに繋がれている全ての端末のデータを書き換えなければならない。

 

 しかしこれだけでは実はNFTとしては不完全である。なぜなら盗んだりコピーはできないものの、全く同じデジタルアセットをスマートコントラクトは生成できるからだ。この時点では他のビットコインやイーサといった仮想通貨と何ら変わりない。ここで、ERC-721という規格がイーサリアムにおいて発明された。そしてこのERC-721がNFTのもう一つの名である。

ERC-721

 ERCとは ”Ethereum Request for Comments” の略で、イーサリアムが設定したトークン規格の名称である。イーサリアムには、イーサ以外にも様々な仮想通貨やNFTが存在する。しかしそれらが全く別の方法でプログラムされていたり、定義されている情報が違えば、同じブロックチェーン上に存在しているのに、互換性が全くないという事態が発生してしまう。そうしては、結局各仮想通貨やトークンを中心にした、バラバラのコミュニティが集まるだけとなってしまう。そのようなことを避けるために、イーサリアムでは様々な規格があり、各トークンの互換性を担保している。

 そこで、NFTに使われているのがERC-721である。ここでは各トークンに固有のTokenIDが振り分けられている。これがNFTの代替不可能性の源泉である。製品番号のように、各デジタルアートやカードなどが固有のTokenIDを有するため、例え見た目が限りなく近くても、それは決して同じものとはならない。また、ERC-721ではアドレスが定義される。それによりイーサリアム上でそのNFTが誰に属するのかの、所有権を表す。

 

 しかしそんなERC-721にも欠点がある。それがERC-721を他のアドレスに送ろうとした場合、各トークンを送るごとに1トランザクションとなってしまう。これの何が問題かというと、NFTが広まり、多くのNFTに関する取引が行われるようになるにつれて、イーサリアムが取引過多により遅延が発生する可能性があるのだ。さらに、取引が増えることによりガス費の高騰を招く可能性もある。

 

 そのような問題を解決すべく、ERC-1155という新しい規格が開発された。これはplay-to-earnのNFTゲームの様なゲームに用いられている規格で、ERC-20とERC-721を掛け合わせたようなものである。次回はこのERC-1155についてより詳しく見ていく。

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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。

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