英国王立防衛安全保証研究所(以下RUSI)がNFTの犯罪での利用可能性に関するレポートを提出した。具体的には仮想通貨やNFTの透明性の欠如から、マネーロンダリングや違法行為を情緒する可能性があると指摘した。
現状において、NFTはもちろんのこと仮想通貨全般の法整備は全くと言っていいほど技術の真価に追いついていない。それもそのはずで、立法を担う機関や政治家で、ブロックチェーン業界の現状やその向かっている方向を十分に理解している人材は極めて少ないからだ。
ブロックチェーンは全ての取引データが、全てのノードに格納されているため、誰でも取引の内容は確認できるものの、その取引アドレスの所有者がどのような人間なのか知るすべはない。銀行であれば本人確認や詳細な情報の登録によって、各取引に関わっている人間や組織の背景を調べることが可能だが、そのようなものはブロックチェーンには存在しないのだ。
現在NFTで最も人気の活用方法はアートである。しかし絵画や骨董品といった美術品はそもそもNFTが生まれる前からマネーロンダリングの伝統的な手法として問題視されていた。
犯罪組織が違法な行為をして得た資金を一度美術品や金などに換えて、それをもう一度売る。購入時の資金がたとえ違法な行為から生まれたものであったとしても、売却時に得る資金はオークション会社や個人から受け取るお金である。つまり、同じ金額であっても、売却時に得るお金は合法的な期間から得たお金となり、犯罪行為から発生したお金の行先はわからなくなる。これがマネーロンダリングの仕組みだ。
従来の合法的な機関を仲介とした取引でさえマネーロンダリングに悩まされているから、発展途上で法整備も遅れているNFTや仮想通貨業界がそのような犯罪資金の運用に利用されるのも驚きではない。
RUSIはこのような現状を打開する方策として、2要素認証(2FA: 2 Factor Authentication)の導入を推奨している。個人情報だけでなく、その情報を入力した人物がその入力された情報の示す人物と同じか確認することで、架空の人物をブロックチェーン上に登録した利することを防ぐことができる。更にこの方策は犯罪利用だけでなく、脱税や税の申告漏れといった事も防ぐことが可能だろう。
しかしこれは同時に政府による仮想通貨やNFTの取引の監視と統制を可能とするものであり、ブロックチェーンの根本にある非中央集権化という考え方と真っ向に対立する。
匿名性や自由と危険性、監視体制と安全性といったようなトレードオフが起きがちな昨今のブロックチェーン業界だが、このような問題が解決される日はまだまだ遠いのかもしれない。
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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。