前回の記事では仮想通貨を用いてインカムゲインを得る3つの方法を紹介した。今回はその中で扱った「流動性マイニング」について詳しく見ていく。
流動性マイニングとは?
前述の通り、流動性マイニングとは仮想通貨を用いて定期的な利益を得る方法だが、実際はどうそれを実現しているのか?
イェールドファーミングと大体の概念は共通しており、流動性提供者(以下LP)が仮想通貨をDeFiプラットフォームに提供することで、LPは利益を得る。しかし、イェールドファーミングとの大きな違いは、LPが仮想通貨をロックする際、一つにコインだけでなく、ETH/USDT(イーサリアムとテザーUSDT)といった「ペア」で預け入れを行うという点である。そして、預け入れたペアの、プラットフォーム全体の総額に占める割合に応じて、報酬が支払われる。
例えば1ETHが2500USDT(約2500ドル)の時、あるLPが4TH(1万ドル)を預け入れたとする。そしてその時のプールの時価総額が10万ドルとした場合、その預け入れを行ったLPはプラットフォーム全体の10%を占めていることとなる。そして取引手数料を0.3%と仮定すると、1ETHの交換により発生する手数料は0.003ETHとなり、このうちの10%分、つまり0.0003ETHがユーザーの報酬として支払われる。
さらに、流動性マイニングのもう一つの大きな特徴が、LPへの報酬としてガバナンストークンも支払われることである。例えば最も有名なDeFiプラットフォームのCompoundではCOMPトークンもLPへと配られ、このトークンは取引所に上場しているため、COMPトークンを通常通り売ることで、更に報酬を獲得できるという仕組みだ。
流動性マイニングの落とし穴「Impermanent Loss (IL)」
しかしそんな夢のような仕組みを持つ流動性マイニングにも、損失を発生させる可能性がある。それがImpermanent Loss (IL)と呼ばれる現象だ。これはコインをプラットフォームに預け入れている間に起きた大きな価格変動により、本来コインを保有していれば価格変動によって得られた利益を逃すことであり、経済学で言う機会損失のようなものだ。
例えば先程の例の様に1万ドル相当の4ETHを預け入れていた時に、ETHの価格が2倍となり5000ドルになったとする。その場合、ETHを保有していればUSDT建ての資産総額は倍の2万ドルとなるが、流動性マイニングを行っていてETHを預け入れていた場合、資産総額は1万ドルで固定されているので、保有により得られたはずの利益を逃してしまう。これがILである。
これからも仮想通貨を取り巻くシステムは複雑化していき、様々な金融商品も生まれるだろう。しかし同時にテクノロジーの進化により、ユーザーインターフェースが向上することで、背景の複雑性を隠した、よりシンプルで扱いやすい分散型金融が生まれていくことを願う。
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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。