データでみるDeFi犯罪の拡大
今年の8月時点でDeFiによる盗難被害は、総額4億ドル(44億円)にまで登る。去年の10月下旬からDeFiによる仮想通貨の盗難が始まり、今年の4月からその額は急増している。
今年8月には、異なるブロックチェーンの相互運用を目指すPoly Networkから6億ドル(650億円)相当の仮想通貨が流出した。幸運にもこの事件は攻撃者を特定し、盗難されたコインは全て回収されたが、危うくDeFi史上最大の盗難事件となる可能性もあった。因みに、この事件に関わる仮想通貨は回収されたため、上記のグラフには含まれていない。
また奇しくも、今日10月28日にDeFiプラットフォームのCream Financeが1.3億ドルの盗難被害を発表した。今回の盗難ではシステムの発行するCream LPトークンが主に盗まれた。このトークンはユーザーが仮想通貨をプラットフォームにデポジットした際に報酬として受け取れるトークンである。しかしこのニュースを受けて、Cream LPの価格は数分の間で152ドルから111ドルまで下落した。価格は27%暴落し、これはDeFiの盗難事件はプラットフォームだけでなく、それを利用するユーザー全員に莫大な不利益をもたらすものであることも示唆している。
DeFiプラットフォームの味方Immunefi
そんな中、DeFi界隈に現れた突如現れた救世主がいる。Immunefiという去年創業したブロックチェーン系スタートアップは、このようなシステムの脆弱性に悩むDeFi開発者たちを救うエリートプログラマー集団である。
32のホワイトハッカーのチームで構成されるImmunefiは、DeFiプラットフォームのプログラムを検査しシステムのバグや欠陥を見つけるサービスを提供する。ホワイトハッカーとDeFiプラットフォームを繋ぐImmunefiのクライアントには、Chainlink、SushiSwap、PancakeSwap、Synthetixといった有名どころが勢揃いしている。
過去にはPolygonがサービスの報酬として200万ドル(2.2億円)を支払ったが、Immunefiが発見したバグは8.5億ドル(930億円)もの資金を危険にさらすものだった。CEOのMarchell Amadorはこれまで3500個の欠陥、220億円相当の被害を防いできたと語る。
ビジネスモデルの話をすれば、Immunefiはハッカーたちに支払われる報酬の約10%を手数料として得ている。サイバーセキュリティ重要性は上がり、人材不足も予想される中、このような優秀なホワイトハッカーたちを効率的に繋げるサービスは、人材育成と同様に非常に重要な役割を担うだろう。
おわりに
今回は仮想通貨、特にDeFiについてネガティブな内容が中心となってしまったが、サービスとしての成長はすさまじい。DeFiの誕生により、お金の貸し借りという従来の金融サービスですらブロックチェーン上で行えることが証明されてしまった。更にそこからイールドファーミングや流動性マイニングといった、仮想通貨の新しい運用方法も生まれてきている。
まだ拡大中のDeFiは、ユーザーを集めるシステムも積極的に開発中だ。市場参加者が増えるにつれて、マーケットの流動性が上がり、更に新しいサービスが構築可能となる。そしてそれが新たなユーザーを呼ぶという好循環がDeFiで起きてると筆者は感じる。
DeFiは仮想通貨とトークンを用いることで、各国の通貨制度にとらわれない金融サービスを提供可能にする。世界中どこにいてもウォレットがあれば、この地球のどこかに住んでいる誰かと可能になるのだ。それがDeFiの可能性である。しかし、同時にそんな夢のようなサービスが拡大していく一方、ハッカーとの戦いは今後もDeFiのみならず、最先端技術を追い求める全ての開発者たちが避けては通れない道だろう。
その為、ブロックチェーンが拡大するにつれてサイバーセキュリティ産業やImmunefiのような、システムの欠陥を発見してくれるホワイトハッカー達による第三者サービスの重要性も増していくと予想する。
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BlockRabbit『クリプト訪ねて三千里』とは。
第924話からのターン。暗号資産、DeFi、NFTに感化された新進気鋭の若手が定期的に登場します!
ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムもあり、アメリカ発の最新情報など絶妙にサンドウィッチされて生きた情報をお届けいたします。
第596話~第923話まで、バトンタッチを受けたcryptoトレーダーは、DeFiとは何ぞや?ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムを書いていきました。
~第595話まで
現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。