直撃インタビュー:Arwen -取引所に資産を預けずにトレーディング

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ArwenはいわゆるNon-Custodial TradingプラットフォームのOEMを提供するスタートアップです。Non-Custodialとは、Custodyがいらない、つまりトレーダーが資産を取引所に預けないまま、トレードができることを指します。先日Shapeshiftが同様のプラットフォームを提供したことで界隈では認知度が高まってきているように見受けられます。

特に日本では、MtGox、CoinCheck、Zaifの事件等、日本では取引所のハッキングリスクを痛いほどよく理解して人が多い中、そのようなカウンターパーティーリスクを0にしようという大胆な試みを行う同社は刮目すべき取り組みを行っていると言えるでしょう。今回はArwenのCEOであるSharonにインタビューをさせていただきました。

The Arwen: https://www.arwen.io

The most secure way to trade on highly liquid cryptocurrency exchanges.

Arwenとはどんな企業

つい先日BitPointのハッキング事件があり、日本の取引所のハッキング被害はこれでMtGox、CoinCheck、Zaifに続く4件目になります。もはや取引所=ハッキングリスク、というイメージを払拭するのが不可能なのでないかと思うほど、頻繁にこのようなニュースを耳にしますが、Arwenは昨今のそんなリスクを激減させる技術を開発しています。

Arwenはトレーディングのプラットフォームを提供しているのですが、一般的な取引所と異なり、資産を預けずにトレードができるという点がArwenのプラットフォームの特徴です。

まず一般的な取引所において、トレーダーがするべきことは資産の預入れ。それはつまり、取引所がトレーダーに代わり、資産を管理することとなり、今回のようなBitPointのカウンターパーティーリスクをユーザーが負う危険性があります。

しかし、Arwenのプラットフォームでは、そのデポジット自体をする必要がありません。いわゆるNon-Custodialと呼ばれるもので、トレーダーは自分の資産を自分で管理して、トレーディングプラットフォームにアクセスできるというものです。

約定機能は一般的な取引所に劣らず、正確なプライシング、迅速な取引が可能となっています。

他の競合企業との違い

いわゆる巷にあるNon-Custodial TradingとArwenは決定的に異なるとSharonは言います。比較の例に挙げてもらったのは、つい先日同プラットフォームのリリースを発表したShapeShift。

ShapeShiftはいわゆる”Second Send Protocol”というものを用いており、ユーザーがクリプトを送金し、その着金をShapeShiftが確認してから、ユーザーへクリプトを送金するというプログラムとなっています。これはつまり、相手が送金し返さないリスクをユーザーが全て負うこととなるのと同義で、Arwenが目指すものとは異なるとSharonは説明してくれました。具体的に異なる点は、ArwenではSecond Send Protocolを用いず、Atomic Swap Protocolを活用しています。

Atomic Swapはブロックチェーン自体に内包される技術で、BTC、LTC、BCHの異なるブロックチェーン間でのオンチェーンのトランザクションを実行することができる技術です。Arwenの構築するAtomic Swapにはサードパーティーが関わらない為、Shapeshiftのようなリスクをユーザーが負うことが全くありません。

 

Non-Custodialの今後の展開は

2016年、Non Custodial Tradingだと思っていたShapeshiftが$230Kのハッキング被害に遭い、Second Sendリスクの存在が浮上しました。

2017年にはDexが勃興し、クリプト界隈の人々はEtherDelta等の誕生に狂気していました。が、直ぐにDexの課題が浮き彫りとなりました、というのも、Dexでは別々のプラットフォーム、つまりそれぞれがオーダーブックを提供していたため、流動性が十分でなく、ユーザーは思うようなトレードができませんでした。

そこで、Arwenが取っているアプローチはCEX(Centralized Exchange)の流動性にアクセスできながら、Non-Custodialなトレードができるプラットフォームの構築です。

Dexはオンチェーンでユーザー同士のトレーディングが可能な画期的な技術ですが、結局のところ、トレード自体が十分に出来なければ意味がないのと等しいでしょう。

一方でBinanceやBitfinexが取り組んでいるDexには注目しているとSharonは語りました。その理由としては、両者はDexに足りないネットワークエフェクトを既に有している点で、非常に面白いサービスになると考えているからだと述べました。しかし、Sharonは同時にBinanceChain等の独自チェーン特有の問題点も指摘しました。

”BinanceChain上には確かに既に幾つかのトークンが発行されています。しかし最も主流なBTC、ETHや他のチェーン上のクリプトはどうするのでしょうか。彼らはBTCとペグ下BTCB等を発行することで、その問題点をカバーしていますが。これでは私が繰り返し唱えてきたサードパーティーリスクを負うこととなってしまいます。”

そこで、Arwenとしては、究極的には異なるチェーン同士のトランザクションも可能にするInteroperability(相互運用性)の研究に注力していきたいと語りました。中でも、一番取引ボリュームがあるBTC/Stablecoinをサードパーティーリスクなしでトレードできるような環境を構築できるようにしていきたいと強い意気込みを吐露してくれました。

 

Arwenの次のアップデートについて

ArwenはAtomic Swapを採用していることから、現在対応可能な通貨はBTC、BCH、LTCのみとなっています。しかし、異なるチェーン同士のトランザクションを可能にするInteroperabilityの研究も進めており、今はEthereumの統合に向けて開発を進めているそうです。Ethereumさえ実装できれば、ERC20系のトークンも自然と対応可能となるため、取り扱える通貨の数が爆発的に増えることが期待できます。

日本市場について

投資家にDigital Garageを有することから、日本へは何度も訪れたことがあるというSharonに日本のブロックチェーン市場の見解を語ってもらいました。

日本は他国と比べてもブロックチェーンという技術に対して好意的であるという印象をもっているようで、非常に興味深いマーケットだと考えていると述べました。Arwenとしても日本の取引所とは技術提供等で関係を構築できたらと考えているとのことでした。しかし、日本はクリプト/Fiatのトレーディングが主流であるため、クリプト/クリプトのプラットフォームを提供するArwenはどのように活路を見出すか試行錯誤しているところだと言います。

 

あとがき

今回ご紹介したArwenはDEXとCEXのハイブリッドなプラットフォームを実現しようと界隈でも珍しい研究に奮闘する非常に興味深いスタートアップでした。Dencentralizedに傾倒するあまり、ユーザビリティが置いてけぼりになってしまっているサービスは少なくありません。そのような中で、Arwenのような両者のいい所取りを目指す姿勢は、今後のブロックチェーン界隈でも大変重要になってくるのではないかと、インタビューをしながら感じました。

 

実際のインタビューの様子(音声のみ)はこちらのPodcastからご視聴ください!

https://anchor.fm/block-rabbit

 

Interviewee Profile

Sharon Goldberg:CEO & Co-Founder of Arwen

Sharon brings over a decade of expertise in network security and cryptography. She is also an associate professor in the Computer Science Department at Boston University, where her research focuses on securing the protocols that provide many of the global internet’s core functions. Sharon received her Ph.D. from Princeton University in 2009 and is the recipient of two IETF/IRTF Applied Networking Research Prizes, an NSF CAREER Award, an N2 Women Rising Star in Networking and Communications Award and a Sloan Research Fellowship. In her spare time, she enjoys working.