パリやニューヨークなどでランウェイを開き人々を魅了するファッションブランド達。彼らが次に目指すのは間違いなくデジタル世界、つまりメタバース市場である。3月24日にはDecentraland において4日間のファッションウィークも開催され、ドルチェ&ガッバーナやヒューゴボスといった世界的ブランドも名を連ねた。イベント自体のクオリティは現実世界のそれには遠く及ばなかったものの、今回のイベントは今後のファッション業界の展望を示しているものではあった。
2021年には多くのファッションブランドがメタバースへの参入を発表した。NIKEやVansはRobloxにて自社店舗をオープンし、バレンシアガはFortniteにてゲーム内スキンを多く後悔した。NFT技術を用いたファッションなども広く受け入れられ、これらのファッションブランドがメタバースにおいても一定の地位を確立できることは明確である。
しかし現実世界と同様にブランド達がメタバース内のファッション業界を独占する可能性は低いと考えられる。その理由はファッションブランドの価値の源泉に関係がある。それは製品のブランドと、その製品の「クオリティ」である。シャネルやGucciといったハイブランドを購入した際は、人々はその製品のブランドにお金を払うと同時に、ある程度のハイクオリティがその製品に備わっていることも期待している。デザインや性能、ミスの無い製造などである。これら全てを実現するのは簡単なことではなく、人件費や材料費などコストもかかるし、それがハイブランドが限られた数しか存在しない理由でもある。
しかしメタバースとなると話は変わってくる。材料費がなければ、製造やサプライチェーンといった物質的要素は関係なくなる。つまり、ハイブランドが現実世界で差別化の一つとして用いていた製品のクオリティといった部分がメタバースでは機能しなくなるのだ。
さらに、メタバース世界における重要な要素は、個人にフォーカスをしていることにある。つまり個人が着たいもの着て、現実世界とは関係なしに、理想の自分を表現することができる。そうなった際に、ハイブランドで身を固めることが必ずしもユーザーがメタバースで求めていることとはならないだろう。逆に、自分の思い出の品や憧れのスキンなどをパーソナライズして身に着けることができることの方が、ユーザーにとってはより魅力的となる。
メタバース専門のデジタルデザイナーも多く登場しており、ハイブランドたちが提供できないような、より個人のニーズに寄り添ったファッション製品を提供してくれる。そもそも現実世界でオーダーメイドのカスタム製品が高価なのも、製造を一律化することができずスケーラビリティが低いことが理由の一つである。
このような要素を鑑みたときに、必ずしもファッションブランドたちが現実世界の様な地位をメタバースにおいても確立できるとは必ずしも言えないのではないだろうか。「製造」や「性能」という要素がファッション製品にあまり関係しないメタバースにおいて、人々がどのようなものに価値を見出すのか、非常に興味深いため今後も動向を追っていきたい。
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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。