前回の記事では、NFTを作成する際に採用されているトークン規格”ERC-721”について解説を行った。その主な問題点として、取引数増加によるガス代の高騰を招きうること、そしてネットワークの混雑を挙げた。
ERC-721では1トランザクションにつきトークンを1つしか送信できない。つまり、100個のNFTを送ろうとすると、トランザクションを100回行う必要がある。そして現在のイーサリアムのガス代は約5ドルなので、NFTを100個送信するだけで、約5万円のコストがかかることとなる。
そのようなスケーラビリティ問題を抱えるERC-721を解決するために開発された規格が、ERC-1155である。
ERC-1155の概要
このトークン規格は、仮想通貨やデジタル証券などの金銭的使われ方をするERC-20と、オーナシップを持ちながら各トークンの独自性を保つERC-721を組み合わせた、ハイブリッド型のトークン規格である。
ERC-1155は、EnjinのCTO&Co-Founderである、Witek Radomski氏によって開発された。Enjinは2009年からオンラインゲーム市場に参入しており、近年ではイーサリアム上でユーザーがゲームを作成できるコミュニティを作成している。
ERC-1155の利点
ハイブリッド型の規格といったが、主なERC-1155の利点は2つある。1つ目は、複数種類のトークンをグループとしてまとめて送ることができる点である。ERC-20とERC-721では、別の種類のトークンを送信したい場合は、その都度別のトランザクションを行う必要があった。
2つ目の利点は、1回のトランザクションで、複数の相手にトークンを送ることができる点である。これもまた従来の規格では、別々の相手にトークンを送る際は、その相手ごとにトランザクションが発生していた。
二つの利点に共通していることは、これまで複数のトランザクションが必要とされていることを簡素化している点にある。そしてこれはPlay-to-earnのNFTゲームにおいて、非常に重宝されている。
Play-to-earnゲームにおいて、各アイテムはユーザーが保有しているため、アイテムがNFTとして存在している・もしゲーム上のすべてのアイテムがERC-721トークンの場合、それはプラットフォームに莫大な負担をかけることとなる。
複数のアイテムを単一の取引として処理できるこのERC-1155規格は、特にトレーディングカードNFTに活用されている。代表的なのは”NBA Top Shot”などだろう。プレイヤーのカード一つ一つはNFTであるが、それをランダムパックとして販売する場合は、ERC-1155の企画なら、その送信を1トランザクション内で完結することができる。
さいごに
しかしそんなERC-1155も、現在ERC-721規格のNFTとは互換性が無いことが問題となっている。またここでも相互運用性の問題が発生している。様々なサービスやプロダクトがブロックチェーン上で誕生するのは非常に嬉しい。しかし、それらが仮想通貨を介した金銭的互換性も、また両者の了解による直接交換というより物理的に近い互換性の両方が早く確立されることで、更にブロックチェーンの周りでの経済活動が活発になると期待している。
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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。