クリプト訪ねて三千里:第1345話
タックスヘイブンとは? [ BVI ]

前回の記事に続いて、今回も世界に存在するタックスヘイブンの一例を紹介していく。今回は、BVIこと、イギリス領ヴァージン諸島である。英語での正式名称は”British Virgin Islands”で、略称はBVIである。

 

BVIはカリブ海の西インド諸島にあるイギリスの海外領土であり、ケイマン諸島同様、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の間に位置する。この島の歴史は古く、14903年にコロンブスによって発見されたのち、1648年にオランダ人が植民を開始したが、1672年にはイギリスに併合されている。人口も3万人程度の、非常に小さな領土である。実は、先週紹介したケイマン諸島もBVI同様にイギリスの海外領土である。なぜイギリスがこのようにタックスヘイブンを持ち続けるのかは、また別の機会に紹介したい。

 

BVIの経済は多くが金融分野によって成り立っており、会社法等の法律がオフショア投資家やオフショア企業を誘致するような構成となっている。なんと、BVIはGDPの1/3はオフショア企業からのライセンスフィーや口座開設といった金融サービスとなっている。

 

BVIがオフショア企業/投資家から好まれる理由は以下のようなものがある;

  • 法人税がゼロ。その他、個人の所得税、キャピタルゲイン税、贈与税、相続税も存在しない(2019年よりEUのEconomic Business Actにより、BVIの税制を適用されるには、企業活動の多くをBVI内で行うことが必要なった)
  • M&Aや企業の転移に関する規制が緩く、現存の海外企業がBVI内の企業を併合したり、海外企業がBVIに移転することも容易
  • アメリカ領ヴァージン諸島とも良好な関係を築き、US,イギリスといった金融大国とのつながりが強い
  • 地理上、アメリカやイギリスとの時差が少なく、ビジネスをスムーズに行うことが可能
  • イギリスのコモンローの元に、しっかりと法整備がされている

 

前述のEconomic Business Actだが、BVIの税制が企業に適用されるには、企業は同法が定める審査を通過する必要がある。

審査の内容は、

  1. 企業の統治や運営、取締役会などがある程度の頻度で実際にBVI内で行われているか
  2. Core Income Generating Activitiesに該当する活動の幾つかがBVI内で行われているか
  3. BVIに架空オフィスではなく、実際のオフィスがあるかどうかなどがある。

しかし、Economic Busines Actは、企業に対しこれらの基準を「十分に」満たすことを要求しており、それが実際にどの程度なのかは明文化されていない。

 

その他にも、タックスヘイブンとして企業や富裕層からBVIが好まれる理由は、情報の機密性である。BVIは1960年代からスイス同様に「秘密主義」が導入されたことだった。昔は誰がどのような取引をいくら行ったか、といった情報を他の国に漏らさないようにしており、これは資産を海外に隠し持ちたい企業や富裕層にはもってこいの主義である。しかし、BVIはCommon Reporting Standards (CRS)に2017年に署名し、世界的なKYCポリシーやAML (anti-money laundering)に協力的となり、秘密主義が消えつつある。

 

BVIは総じて、他のタックスヘイブンに比べて国際的な税制強化には協力的であり、EUのタックスヘイブンブラックリストにも入っていない。次回は、このブラックリストに載っている、さらにグレーな地域を取り上げていく。

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