米SECが暗号資産を伴う投資契約向けに、新たな資金調達制度を提案した。500万ドルと7,500万ドルの免除枠、条件付きSafe Harborの構造を整理し、日本のWeb3企業が米国市場へ進出する際の意味を考える。
「トークンか証券か」から資金調達の設計へ
米国の暗号資産規制で長く問題になってきたのは、あるトークンが証券に該当するかという入口の議論だった。しかし、Founderにとってさらに実務的な問題は、証券法の対象になった場合に「では、どうやって合法的に資金を集めるのか」である。
米SECが2026年8月に提案した「Regulation Crypto Assets」は、この部分に専用の経路を設けようとしている。現時点では最終規則ではなく提案段階で、パブリックコメント期限は10月20日。それでも重要なのは、規制当局の議論が分類論から資本形成の制度設計へ移り始めた点だ。
500万ドルと7,500万ドル、二つの入口
提案には、暗号資産を伴う一定のinvestment contract(投資契約)を対象とする二つの登録免除が含まれる。
一つは、4年間で最大500万ドルを調達できるstartup exemption。もう一つは、12カ月間で最大7,500万ドルを調達できるfundraising exemptionだ。
後者では財務諸表の提供や継続的な報告が求められる。両制度とも原則ベースの情報開示が必要で、詐欺防止・市場操作防止規定から自由になるわけではない。
ここで見るべきなのは金額だけではない。従来、Web3のFounderはトークンを使った資金調達について、既存の証券登録制度に適合させるか、米国投資家を避けるかという難しい判断を迫られてきた。今回の提案は、その中間に暗号資産向けの明示的な資本形成ルートをつくろうとしている。
Safe Harborが示す「時間軸」の考え方
もう一つ重要なのがconditional safe harbor(一定条件を満たした場合のセーフハーバー)だ。
SECは2026年3月の解釈でも、暗号資産そのものと、それを販売するときに成立する投資契約を区別する考え方を示している。今回の提案では、発行者が約束していた本質的な経営・開発上の努力を完了、または恒久的に終了した場合などに、一定条件の下でinvestment contractとの結び付きを切り離せる仕組みを提示した。
これはトークンの法的位置付けを永久に固定するのではなく、「誰の努力に価値形成を依存しているのか」を時間軸で見る発想につながる。
Founderにとっては、発行時の法務だけでなく、ネットワークの成熟、ガバナンス移行、開発主体への依存度をどう設計するかが規制対応の一部になる可能性がある。
日本のWeb3企業に何を意味するか
日本のFounderにとっても、これは米国内だけの話ではない。日本で法人やプロダクトを立ち上げても、米国投資家への販売、米国でのマーケティング、取引市場へのアクセスを考えれば、米国証券法との接点は無視できない。
特に注目したいのは、「米国を避ける」ことと「米国向けに登録する」ことの間に、専用の制度的ルートが形成される可能性だ。最終規則の内容次第では、Japan EntryならぬUS Entryの設計に、発行主体、開示、調達額、トークン配布、ネットワーク成熟までを一体で考える必要が出てくる。
同時に、日本側の資金決済法や金融商品取引法上の整理が自動的に変わるわけではない。日米で同じトークンを扱う場合でも、それぞれの法的分類と販売方法を別々に検証する必要がある。
まとめ
Regulation Crypto Assetsの本質は、暗号資産を単純に規制することではなく、Web3企業が証券法の枠内で資本形成するための専用レーンを設計しようとしている点にある。
500万ドル、7,500万ドルという数字以上に重要なのは、情報開示と継続報告、そしてプロジェクト成熟後のSafe Harborを一つのライフサイクルとして捉えていることだ。
まだ提案段階であり、制度の詳細は変わり得る。それでも海外展開を考える日本のWeb3企業にとって、米国市場を最初から除外するのではなく、規制をプロダクトと資本政策の設計条件として組み込むという選択肢は、今後より現実的なものになりそうだ。







