a16z crypto主導で2500万ドルを調達したOpenReserveは、OCCから国法銀行設立の予備的条件付き承認を取得した。預金・融資・ステーブルコイン・オンチェーン決済を同一制度内に置く事業モデルと、日本への示唆を整理する。
Web3企業が銀行と接続するのではなく、銀行そのものを再設計する
これまで暗号資産企業の多くは、銀行口座、決済、カストディなどを既存金融機関から調達し、その上にWeb3サービスを構築してきた。OpenReserveが選んだのは逆のアプローチだ。銀行機能そのものをオンチェーン前提で設計し、預金、融資、決済、カストディ、資本市場を一つの規制主体の中でつなごうとしている。
米通貨監督庁(OCC)は9月2日、OpenReserve Bank, N.A.の設立について予備的条件付き承認を与えた。ただし営業開始の最終承認ではない。同行は開業前に少なくとも2億1000万ドルの払込資本を確保し、営業開始後3年間はTier 1レバレッジ比率12%以上を維持するなどの条件を満たす必要がある。
Founderが選んだのはTrust BankではなくNational Bank
OpenReserveはMoneyLion創業者のDee Choubeyと、同社で経営を担ったRick Correiaらが設立した。9月にはa16z crypto主導で2500万ドルのSeed資金を調達し、Jump Capital、Coinbase Ventures、Wintermute Venturesなども参加している。
注目点は、デジタル資産のカストディを中心とするNational Trust Bankではなく、預金と融資まで扱えるフルサービスのNational Bankを目指したことだ。難しい規制ルートを選ぶ代わりに、預金から信用創造、決済までを同じバランスシート上で扱える可能性を得る。
トークン化預金とステーブルコインは別レイヤー
計画では、通常預金に加えてトークン化預金を提供し、銀行預金という法的性質を保ちながらプログラマブルに移転できる仕組みを構築する。また子会社ReserveUSDを通じ、GENIUS Actに対応するステーブルコインrUSDの発行も計画している。
ここで重要なのは、Tokenized DepositとStablecoinを同じものとして扱っていない点だ。前者は銀行の預金債務、後者は別の準備資産型決済手段であり、信用構造や規制上の位置付けが異なる。OpenReserveは両方を接続し、用途ごとに使い分ける金融基盤を目指している。
収益モデルは暗号資産取引手数料ではない
想定される収益源は、預貸金利ざや、決済・Treasury Management、カストディ、Stablecoin関連サービス、資産担保融資、トークン化証券など複数にまたがる。つまりトークン価格や取引高だけに依存するモデルではなく、銀行と資本市場インフラの収益構造をオンチェーンへ移す発想に近い。
まだ開業前のため、TVLや決済件数など実利用を示すオンチェーン指標は存在しない。営業開始後に見るべきなのはTokenized Deposit残高、rUSD供給量、決済額、融資残高、預貸率、オンチェーン決済の比率などになる。
日本にとって重要なのは「銀行とWeb3」の境界
日本ではステーブルコイン、電子決済手段、セキュリティトークンが制度ごとに整理されている。一方、OpenReserveの構想は、それらを個別サービスとしてではなく、銀行預金・信用・決済・オンチェーン市場を連続した金融インフラとして設計しようとしている。
日本の金融機関にとっても、単にブロックチェーン商品を追加するだけでなく、勘定系、決済、預金、担保管理までをどこまでプログラマブルにできるかという議論につながる。海外Web3企業のJapan Entryでも、銀行APIとの接続ではなく金融機関そのものとの共同設計が重要になる可能性がある。
まとめ
OpenReserveで見るべきなのは、新しいステーブルコインの誕生だけではない。銀行免許、預金、融資、決済、トークン化資産を一つの規制されたプラットフォームへ統合しようとしている点に本質がある。まだ予備的承認段階であり実行リスクは大きいが、Web3企業が金融の外側から銀行へ接続する時代から、銀行そのものをオンチェーン前提で作る段階へ進みつつあることを示す事例である。







