こんにちは!ブロックラビット編集部です。今日は先日ラビットレポート(速報)でお伝えしました、「第4回LITTLE MONSTER Meet- up in Japan!」の内容を元にお話できればと思います!
カメレポートとは、当日行われた議論の一部を取り上げ、Block Rabbit編集部が独自の見解と情報を盛り込んだ深堀レポートです。
今回の記事について
第4回の勉強会では、人材系の企業さんからの参加者が多いこともあり、トピックは人事におけるブロックチェーンの活用に。人事といえば、社員が関わる全ての業務;採用、業務評価、人材育成、キャリア構築、職場環境の整備等、広範な領域に携わる、いわば企業の核と言ってもいい部署でしょう。勉強会では、日本と海外の人事制度の違いから知見やアイデアを得て、Technologyを活用できる部分がないか模索していましたが、今回のカメレポでは膨大な量の人事における業務の”採用”という部分に焦点を当てていきたいと思います。
メインテーマの前に
リトモンMeet-up!! Vol.4にも参加してくださった皆様、会場をご提供していただいた株式会社Pasonaの石川様、誠にありがとうございました!
また、当日参加できなかった!という皆様は是非こちらのBlock Rabbitテレグラムから次回の情報を見逃さずに!
採用制度の現状と課題
勉強会から見えてきたのが、現行の採用制度が抱える課題です。
採用とは一般的に、履歴書の提出、面接、企業によってはグループディスカッション等の独自の過程を経て、自社に適する人材を選別していく、企業を維持していくためには絶対に欠かせない、企業活動の根幹です。
おそらく、日本の読者のほとんどの皆様は就職活動を通して、上記の過程を実際に経験され、様々な考えをお持ちだとお見受けしますが、Block Rabbit編集部が今回着目したのは、上記の”履歴書”です。
履歴書は大前提として、嘘の記述をしないという観念がありますが、実際に嘘の記述をした場合はバレるのでしょうか?自分がその企業にどうしても入りたいという思いが強ければ強いほど、履歴書の内容を盛ってやろう、という考えが生じるのはごく自然だと思います。
実際に少しばかり自分の経験を誇大に記載した、なんて方は結構いらっしゃると思いますが、それがバレたっていう話あまり聞いたことないですよね?w
実は先日の勉強会で初めて知ったのですが、履歴書の記載に虚偽があるかのスクリーニングはほとんどしないそうなのです。(重役やスポットでの採用は別)
つまり企業は、応募者が記入した履歴書を基本的にそのまま信じて採用を進めていくそうです。証明書や資格の提示を求められる場合もありますが、極端な話、嘘の履歴書に合わせて役作りをして、面接でも自分の経験談のように上手くごまかせてしまえば採用される可能性があるということです。
何千、何万通という履歴書が企業に届く中、正直に等身大の履歴書を提出する人が損をしてしまうような歪が生まれる可能性があります。
採用においては本来、性悪説的な根底が必要なシステムであるのに対し、現行の採用制度は性善説を前提にしており、大きな乖離があります。
そこで、囚人のジレンマ等で一躍有名になったゲーム理論的考え方(実はブロックチェーンの根幹もこのゲーム理論と経済学的設定がされています)で、人々にどのような動機づけを行えば適切なシステムが運営されるのか考えていきたいと思います。
人材市場はレモン市場?
経済学において、その商品を購入しなければ買い手側が商品の品質を判断できない市場を、レモン市場と呼びます。レモン市場は、品質の悪い財が市場に多く出回ることで経済に悪影響を及ぼします。
個人的には人材の市場もこのレモン市場だと捉えています。現在の人材市場において、人の品質(能力や適性)を判断するツール(履歴書等の尺度)やその正確性を審査するシステムが欠陥しています。
このレモン市場を打開するには、
- 商品の品質を買い手側が正確に判断できるようになること
- 商品の品質がそぐわない場合のクーリング・オフ的な制度の導入
が主な解決策となってくると考えます。
二つ目は、人材市場においては労働法的な領域についての言及も必要かと思いますので、今回は一つ目の品質の正確性を向上するためにどうTechnologyが活用できるか、という視点が考えていければと思います。
何かを正確に実行するという面において、人間は機械に勝ることはないでしょう。しかし、履歴書や個人の性格を、人を介さず機械が自動的にデータへ起こすにはIoTの分野で革新的な発展が必要だと思いますので、おそらくずっと先のことになるはずです。ということで、今回は別の線で考えます。つまりは個人が自分で、自分の履歴書等を依然として作成する必要があるかと考えます。しかし問題は、前の章でも言及した人間の性悪説的な部分です。
最初から悪いことをしようと考えている人たちがいる状況で、システムが健全に適切に回っていくためにはどうすればいいのでしょうか?
そこで、Block Rabbit編集部はゲーム理論による人々の動機づけの設定が寄与できるかと考えます。
誠実な人が報われて、嘘つきにはお仕置き
ゲーム理論の設計において非常に重要な要素が”報酬”と”懲罰”です。
本当のことを言えば、10000円与える。嘘のことを言えば、10000円没収。という設定内であれば、人々は本当のことを言うようになるでしょう。つまりは、この報酬と懲罰による動機づけで人々の行動を上手く方向づけることができるのです。
早速、人材のレモン市場においてどのように活用できるのか見ていきましょう。
大前提として、履歴書に嘘の記載をした人が罰せされて、真実を記入した正直な人が報われるようなシステムを設計したいと考えます。
また、重要なのがこのシステムにおける参加者の想定です。ここでは、
- 応募者(履歴書を書く人)
- 監査(履歴書の虚偽をチェックする人)
- 人を雇おうとしている企業
の3者を考えると、下記図のようなゲーム理論的エコシステムが提案できます。
応募者は自分が作成した履歴書を、監査である友人や同僚、先生らに確認してもらい、記載事項を承認してもらいます。
企業はその信頼性の高い履歴書を元に採用か否かの判断をして、もし採用するとの決定を下したならば監査は企業から報酬を支払われます。
ここでいう懲罰は機会損失となります。正確に情報を確認して承認していれば報酬をもらえた、もしくは雇ってもらえた、という機会を失うことが監査と応募者のDisincentiveとなります。
採用が見送られれば報酬は発生しません。つまり監査には、誇大な記載よりも現実に即した正確な情報の確認と承認が促されます。そして、監査を買収して良い評価を書いてもらったところで、それが現実に即していなければ、当然企業の採用も考えられない(報酬がもらえない)ので、監査は買収に乗らないでしょう。(厳密に言えば、ここの数字は上手く設定する必要があります*)
より多くの応募者が正確な履歴書を送るようになれば、企業側も確認と承認が得られたその履歴書をもっと信頼して、このエコシステムに参入します。そして企業側が信頼された履歴書をもとめるようになれば、よりおおくの応募者もエコシステムに参加するようになります。
*買収額<報酬であれば買収には乗らないが、買収額>報酬であれば買収に乗る
この部分は数式を用いて実際どのような数値設定をすればいいのか算定する必要があります。
まとめ
一見ブロックチェーンとは何ら関係のないような話をしていますが、実はブロックチェーンもこのようなゲーム理論的設定が設けられています。
エコシステムの参加者がそれぞれ個別に利するような行動を取ると、システム全体がうまく回る。このような(分散型)システムの基盤には改竄性に強く、また公共性(透明性)の高いブロックチェーンが非常に有効的に活用できると考えています。
例えば、上記の監査の確認・承認の記録も、ブロックチェーン上であればいつ誰に対して行ったのかが誰でも見えて監査自体の評価にも応用できます。
必ずしも上記のエコシステム内で暗号通貨を発行する必要はありませんが、上手く初期設定をいじれば暗号通貨でも上手く回るようなシステムもできると思います。
長々と書いてきましたが、様々な社会的現象はこのゲーム理論/経済学的観点からプログラム(IT)上に落とし込めます。そうした際に、そのプログラムの基盤にはブロックチェーンが組み込まれているのだろうな、と考えています。ブロックチェーンで実現可能な報酬と懲罰の自動化、過去の行動履歴の非改ざん性、透明性は、様々な利害関係者が一挙に参加する分散型のシステムにおいては非常に相性の良い特性です。あらゆるサービスがP2P(個人対個人)で完結していく流れの中で、この分散型システムはP2Pにおける基盤概念となりうるかなり面白い提案だと思いますので、引き続きBlock Rabbitはブロックチェーンを追っていきます!