クリプト訪ねて三千里 第1573話:FrgmntはDeFi利回りを機関投資家の商品に変えられるか、fUSDとAnchorage Digitalの接続

Base上のStablecoin Protocol「Frgmnt」がAnchorage Digitalと連携。fUSDとsfUSDの二層構造、DeFi利回りの配分、Institutional Custodyとの接続から、オンチェーン運用を金融商品化する事業モデルを読む。

DeFiへの入口をウォレットではなくカストディに置く

DeFiを機関投資家へ広げる際、ボトルネックは利回り商品そのものだけではない。秘密鍵管理、承認フロー、会計処理、取引権限など、既存の運用体制から外れるオペレーションが導入障壁になる。

Base上でStablecoin Protocolを開発するFrgmntは9月11日、Anchorage Digitalとの連携を発表した。対象となる機関投資家はAnchorageの既存環境からfUSDを保有、Mint、Redeemできるほか、StakeとUnstakeまで行える。

つまりFrgmntが売ろうとしているのは単なるStablecoinではない。既存のInstitutional Custodyを入口として、オンチェーンのYield Strategyまで一続きにする運用インフラである。

fUSDとsfUSDを分ける理由

FrgmntにはfUSDとsfUSDという二つの資産がある。

fUSDはUSDCなど承認されたStablecoinを預けることで1ドル相当としてMintされるTransferableなStablecoinだ。預けられた資金はMeta Vaultを通じ、Morphoなどを含む選定されたオンチェーン戦略へ配分される。

一方、Yieldを受け取るにはfUSDをStakeし、sfUSDへ変換する必要がある。sfUSDは運用持分を表すYield-bearing Assetで、Frgmntの設計では生成されたYieldの80%がsfUSD保有者側へ複利運用され、残る20%がProtocol Development、Reserve、Strategy Optimizationなどに配分される。

この20%が事業構造を見るうえで重要だ。TVLが増え、Underlying Strategyが収益を生むほどProtocol側にも収益機会が生まれるため、単にToken Supplyを増やすモデルとは異なる。

利回りを作るのはFrgmnt自身ではない

Frgmntの構造で注意すべきなのは、Yieldの源泉を分けて考えることだ。

Protocol自身が固定金利を約束しているのではなく、Backing AssetをLending MarketやVaultへ配置し、そのUnderlying Yieldを集約する。したがってsfUSDの収益性は、借入需要、Utilization、各Protocolの金利、Smart Contract Riskに左右される。

オンチェーンで確認したい指標は、fUSD Supply、sfUSDへのStaking比率、Reserve Allocation、Strategy別の資金配分、実現Yieldである。FrgmntはReserveやPositionをオンチェーンで確認できる設計を掲げており、DuneやDeFiLlamaなど第三者Analyticsからも追跡可能としている。

現時点ではTVLが約10万ドル規模とされ、巨大なStablecoin Protocolではない。むしろ今回のポイントは、小規模なProtocolが流動性を集めてからInstitutional Distributionへ進むのではなく、早い段階からカストディ経由の販売経路を構築している点にある。

Anchorage Digitalとの接続が変える販売経路

FrgmntのCEO兼Co-FounderであるAurélien Rousselは、Fund、Corporate Treasury、Fintechが既存のInstitutional Infrastructureからオンチェーン商品へアクセスできることを重視している。

Anchorage Digital Bankは米国で連邦認可を受けたDigital Asset Bankとして、Custody、Staking、Trading、Settlementなどを提供している。ここへfUSDとsfUSDが組み込まれることで、Frgmntは自前で機関投資家向けの鍵管理やオペレーション基盤を一から構築せずにDistribution Channelを持てる。

これは日本のWeb3事業者にも示唆がある。Institutional DeFiではProtocol単体のAPYより、「誰がCustodyするか」「既存の運用承認プロセスにどう入るか」「Yieldの源泉とRiskをどう分解して提示するか」が商品化の条件になりやすい。

日本で同様のモデルを展開する場合も、StablecoinやVaultを作るだけでは足りない。カストディ、規制対応、会計、償還、オンチェーンモニタリングまで含むDistribution Designが必要になる。

まとめ

Frgmntが興味深いのは、新しいStablecoinを発行したことではなく、fUSDをLiquid Asset、sfUSDをYield Layerとして分離し、その入口をAnchorage DigitalのInstitutional Custodyへ接続した点にある。

事業モデルは、オンチェーン戦略が生むYieldの一部をProtocolへ還元しながら、機関投資家には複数のDeFi戦略を抽象化して提供する構造だ。

今後見るべきなのは表面的なAPYではない。TVLの拡大、fUSDからsfUSDへの転換率、Underlying Strategyの分散、実現Yield、そしてAnchorage経由でどこまでInstitutional Capitalが流入するかである。DeFiの商品化競争はProtocolの性能だけでなく、金融機関が実際に利用できるDistribution Infrastructureの設計へ移りつつある。