DEX(De-centrized Exchange) のまとめ

DEXという言葉を聞かれたことはありますか?実は日本ではそこまで馴染みがないというか、日本語での情報というのは非常にまだ限定されている状況です。しかし、ブロックラビットの事務所があるニューヨークやヨーロッパでは、DEXが実働に向け次々にリリースを打ち出しています。今どんなプラットフォームがあり、現状はどうなのか。乗り遅れないようにチェックしていきたいと思います。

DEXとは

DEXとはDecenterized Exchangeの略で「分散型両替所」です。現在は仮想通貨のエクスチェンジのほとんどが「中央集権型両替所」を通して行われています。取引したいトレーダー2者が交渉から価格の決定、決済までをなにかしらの中央集権的な取引所を介して行うイメージです。
つまり集中管理している取引所にトークンを移し、その取引所の内で決められた価格や決まりごとの台帳に従い、新しいチェーン上で資産を引き落とします。このシステムでは、ハッカーにのセキュリティが破られた場合、実被害に繋がります。このように安全面が脆弱になる可能性が拭えない点、他にも取引所によって取り扱える通貨が限られている点、トレーダー同士が価格を判定(評価)できない点など、現状の中央集権のエクスチェンジは大小ありますがいくつかの問題点を抱えていると言っていいでしょう。
以前からこの中央集権型取引所やいくつかのベンチャーはこの改善に取り組んできました。例えばOxは中央集権プロトコルですが、分散型の研究に熱心で知られています。
ではDEX「分散型取引所」ではどのような仕組みでエクスチェンジを行うのでしょうか?

分散型取引所DEXは、ブロックチェーン上に存在する取引所

端的にいうと中央管理者を介さず、トレーダーが自由に参入し、ブロックチェーン上で暗号によりトークンの交換ができる取引所です。すでにイーサリアムのメインネットでは稼働し始め、交換が可能です。
自身で秘密鍵を保有し、取引価格の正当性を精査し、取引が暗号により安全に記録され、マッチングを完結できるーこう聞くとまるで夢のようなシステムのようですが、完全な分散型プラットフォームを作るには莫大なコストが必要であり、処理スピードの問題など技術的にもまだ克服すべきところは多く、市場レベルでの実用はもう少し先になるかと予想されます。また現状ではマッチング料と手数料の2つが必要なこと、さらに開発の費用をそこに上乗せした場合、果たして集中型に比べ価格的な優位性があるかどうかまだまだ定かではありません。
現在のDEX(と言っている)取引所はどうなっているのでしょうか。その多くは半分散型=いわゆるハイブリット型で集中型と分散型の双方の良いところを併せ持った取引を提供しようという方向性が感じられます。

DEXリスト

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数多くのDEXがあることがお分かりいただけたと思います。来たるDEX時代に向けて、それぞれがどう違うのか、コンセプトや特徴を知りたいですよね。しかしホワイトペーパーなどを見比べても歴然とした違いはわかりにくいのが正直なところです。そこでDEXはあまたありますが、使用しているプロトコルはそう多くはありません。まずは現在公開されている主な分散型プロトコルと特徴をまとめました。

分散型プロトコル

公開・運用されている分散型アプリケーション(dApps)には、両替の取引に特化して作られたもの(Ox)から、それ以外にも適しているもの(Omise)もあり、独自のサービスを展開することで、相乗効果を生んでいます。

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オープンプロトコルで、トークンをイーサリアム上でのみ交換できる。低価格。

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Oxプロトコルのための中継サービス。

ERC20トークン交換のプロトコルで、共通・集中・分散型の取引間の共有流動性プールを提供。

ブロックチェーンの弱みであるプライバシーと計算処理データの遅さを解決する第二層ネットワークで暗号化されたスマート契約が実現。

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Graphene (by Bitshares)

分散型交換のために開発されたものではなく、CRYPTONOMEX社の暗号方式により分散型元帳を展開するための産業用ソフトウェアプラットフォーム。

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OmiseGo (by Omise)

デジタルウォレット。自律分散型の交換ネットワーク(P2P)プロトコルで、取引を暗号と匿名の両方で行うことができる。

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Snowglobe by AURORA

完全に分散された交換プロトコルで、システムが確実に動作するように設計されている。イーサリアムブロックチェーン上に構築された分散型暗号Borealを用いている。

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注文書なしでイーサリアムトークンを取引するためのP2Pプロトコル(近日公開予定)。

現在の分散型エクスチェンジの課題

DEXが乱立する中、完全な分散型の実用化が遅れているのはなぜでしょうか。
一番にはあまりにまだ知られておらず、公開されている分散型取引所でも圧倒的に取引量が少ないことです。開発にも多額のコストがかかります。また下記のような問題点の解決には更に時間がかかりそうです。
・トレーダー自身の責任で行うことによるセキュリティ対策(秘密鍵の保有の安全性、操作ミスの修復問題など)
・ユーザーフレンドリーでない
・処理速度の遅さ。取引情報をブロックチェーン上で処理するのに時間がかかる。
・相互運用性。異なるプラットフォーム間を相互交換するには、クロスチェイン交換の必要性があり、またより多くのブロックチェーン/ dapp相互運用が必要。

どのDEXがいいのか?

ではどのDEXを選ぶべきなのでしょうか。もしくは今後のために投資すべきDEXはどこでしょうか。
上記に挙げた残された課題の中で皆を悩ませているのは相互運用性です。

ブロックチェーン間の相互運用

基本的に、チェーン間の相互運用には2つの方式があります。

1 サイドチェーン方式  取引間のチェーンの状態を伝達し合う方式

最近の取引量の増加に伴い、処理速度が追いつかずに遅延してマイナーが移動したり、手数料が増加するなど、各取引所の独自ブロックチェーンシステムだけでは手に負えなくなり、サイドチェーンが生まれました。ビットコインのブロックチェーンを親チェーンとして、サイドチェーンを繋ぐ考え方です。サイドチェーン上で取引処理を行え、新しいスマート契約の機能が追加できます。またサイドチェーン上で独自の通貨が発行できるので、親チェーン上の通貨と、サイドチェーン上の独自通貨とで取引ができます。これを双方向ペグ(two-way pegging)と言います。

このサイドチェーン方式のメリットは多く、取引処理のスピードアップ、親チェーンを経由する信頼性、ハッキングにあった場合サイドチェーンだけを切り離し被害は最小限、匿名性の向上などが挙げられます。細かい違いはありますが、Liquid、Rootstock、Liskなどがこれにあたります。

2 クロスチェーン・アトミック・スワップ方式  第三者を介さず、異なるチェーンのユーザー間でトークンを交換する方式

交換の仕組みをごく単純に説明します。Aの持っているビットコインとBの持っているライトコインを交換します。Aはビットコインを送るための箱を作り、自分の署名と箱を開ける暗号を入れます。Bも同様です。どちらか一方がコインを取り出した瞬間に後者に暗号が送られ、両者の取引は同時に決着しますので、信用のない相手でも自身のコインを失うリスクはありません。

これが実現すればまさしく分散型の理想です。しかし解決すべき問題点があります。DEXの仕組みで前述した問題点と同じく、プライバシー管理の問題、処理速度、取引手数料のほか、現在では限られた通貨しかエクスチェンジできません。

今、このアトミック・スワップを使用するプロジェクトが今注目を集めています。Cosmos、Polkadot、Blockcollider(white pager内ではアトミックスワップの進化系と表現)などです。 特徴の違うプロジェクトを2つ紹介します。

ブロックチェーンをつなぐネットワークを、ブロックチェーンで作り、メッセージを伝達する。つまりWeb上に変幻自在な分散型プラットフォームがあり、名前の通り各々の取引が暗号化により水玉のように分散しているWebの次世代を目指しています。トークンの所有者が完全に全ての権限を持つブロックチェーンを作っています。
Cosmosも大まかにはPolkadotと似たアプローチです。

ブロックチェーンとブロックチェーンをつなぐチェーン、マルチチェーンを作るという考え方。チェーンのためのチェーンという意味ではCosmosやPolkadotと同じですが、技術的に全く異なる仕組みを提案しています。暗号に特化し「暗号を通じて自由になる」をビジョンに、ブロックチェーン間の「橋渡し」用のブロックチェーンを作っています。Whitepaper内では、アトミックスワップというよりは、アトミックスワップの進化系というような表現を使われています。

まとめ

現在、暗号化された取引の99%は集中型交換所で行われていますが、あと数年後には、分散型と集中型の比率は逆転するとみられています。Oxをはじめ集中型のプロトコルは、分散型の研究開発に積極的で、技術的な解決は近いと見られています。ブロックチェーン上のEthereum交換システムは拡張性(スケーラビリティ)と処理速度をクリアしなければなりません。しかし、State ChannelやSharding / Plasmaなどのソリューションは、拡張性を可能にしつつあります。
「最終的には、中央集中化と分散型のエクスチェンジは、それぞれ独自のメリットを提供しながら共存すると信じています」Medium共同設立者リンダ・シエ

集中型/分散型のハイブリッドモデルが主流になる日もそう遠くなさそうです。
これからもDEXの動向に目を向けていきたいと思います。