クリプト訪ねて三千里:第954話
アメリカの税法のセクション6050Iの改正が仮想通貨取引に与える影響に関するリサーチ

【現状】
アメリカでinfrastructure bill(インフラ投資法案)が連邦議会で可決され、後はバイデン大統領の
署名を持って成立する。
そのインフラ投資法案には、税法のセクション6050Iの改正が含まれている。

まず現在、税法6050Iでは、個人を含む全ての事業者を対象として、取引において100万円以上
の現金を受け取った時に、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)に報告書を提出する義務を規定して
いる。この法律の目的は、マネーロンダリングの防止・撲滅である。

報告書は、IRSが提供するForm 8300というフォーマットを利用して、
・取引相手の名前
・生年月日
・住所
・納税者番号
・ソーシャルセキュリティナンバー
・職業
を記載する必要がある。提出期限は、取引から15日以内である。

この規定に違反した場合、5年間の懲役といった重罪を課せられることになる。

これが税法セクション6050Iが規定する内容である。ここで規定されている報告義務は、現金での
取引の場合に限られていた。
しかし、今回の改正により、現金に加えて“digital assets” の取引も新たに対象となる。
つまり、100万円以上の価値がある“digital assets”を受け取った場合に、政府に報告書を提出す
る義務を負う。

・この6050Iの義務の発生の有無に関連して、注意点がある。
それは、単発の取引が100万円を超えていない場合においても、同様のタイミングで複数の取引
があった場合、それらの各取引を1つの取引として扱うという点である。
つまり、90万円の取引と20万円の取引を行った場合、それぞれの取引額は100万円を超えてい
なくても、それらが合計されて110万円の取引として扱われて、受取人に報告義務が発生するの
である。

【不明確な点・論点】
DEXやDefiを利用した取引において、明確な取引相手(送金主)が存在しない。digital assetsを
受け取った人から見ると、その送金元は、スマートコントラクトや取引所という事になる。
スマートコントラクトや取引所は、人ではない。よって、納税者番号やソーシャルセキュリティナン
バー等の情報も無いため、6050Iに規定される報告義務の対象とならず免除されると言えるのだ
ろうか。

この法律6050Iは1984年に発効したのだが、当時は無人販売機のような形での取引が存在して
いた。買う人は郵便ボックスにお金を入れてものを買っていくシステムである。では、この売主は
報告義務を免れたのかというと免れなかった。今回の仮想通貨の取引における場合も、送金元
や支払い元が誰か特定の人物でないとしても、6050Iが規定する報告義務から免れることはでき
ないと考えられる。

しかし、やはり実態としては、このセクション6050Iが規定する義務と現代のテクノロジーの仕組み
が噛み合っていない。

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現在の実態経済からは少し離れたところに、もう1つの経済圏がブロックチェーンによって興ると考えるShoが、その興隆を追っていくために毎日1社ずつ界隈のプロダクトを紹介していく超短編気まぐれ日刊コラムであり、メディア記事も幾つかピックアップしてお届けしておりました。

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