クリプト訪ねて三千里:第933話次世代のゲーム版YouTube “Roblox”とは?

  1. Robloxとは?

 “Roblox”。もしかしたらこの名前を耳にした人はそこまで多くないかもしれない。しかしこのRobloxは今や、世界中の子ども達にプレイされ、米国では16歳以未満の全ての子供たちの半数以上がプレイする、次世代のゲーミングプラットフォームである。

 

 RobloxはRoblox社によって2006年に開発・発売された。当初はPCでしかプレイできなかったが、2021年にiOS、2015年にはXbox版がリリースされることでその知名度とプレイ人口は飛躍的に上昇した。更に、それまでは非公開の企業であったが、勢いをつけたRoblox社は2021年2月にはニューヨーク株式市場に上場するまでに至ったのである。

 

 ゲーム版のYouTubeとまで言われるRobloxだが、このゲーム(プラットフォームといった方が適切かもしれない)が他と明らかに一線を画す理由がその呼び名にある。つまり、Robloxとはマリオやモンスターハンターといったゲームソフトの様なものではなく、ユーザー自身がRoblox Studioという開発ツールを使い、他ユーザーにゲームを提供する大規模なプラットフォームなのだ。そのため、Roblox社自体はゲームの開発自体は全く行わず、ゲームを作りたいユーザーのサポートや、Roblox内のゲームストアを管理し、プラットフォームの運営を行う。そしてここに、YouTubeとの同質性が垣間見える。

 

 今となってはYouTubeを見ない日はないという程に、特に若い世代に浸透した動画プラットフォームのYouTubeであるが、それを所有するGoogle自体は動画を作りはしない。各クリエイターが自分の発信したいこと、興味のあることをアップし、それに共感する視聴者側のユーザーがプラットフォームに集まる。そしてRobloxでも全く同じことが起きているのだ。ゲームを作りたいディベロッパー側のユーザーが各々の思うがままにゲームを作成し、Roblox上にゲームを公開する。そしてプレイヤー側のユーザーが気に入ればそのゲームは人気になるし、誰からも気に入られなければ、そのままRobloxのプラットフォームにただ存在し続ける。

 

 更に、Robloxのプラットフォームとしての価値を高めるシステムとして、開発者側にインセンティブが用意されている点が指摘できるだろう。Roblox内では”Robux”(ロバックス)と呼ばれるゲーム内通貨が存在する。そしてゲームを作ったディベロッパー側のユーザーは、自身のゲーム内で課金制度を作ることも可能であり、Robloxのプラットフォーム上でゲーム内通貨を稼ぐことができる設計になっているのだ。このように、ゲームというテーマのもとにクリエイターとプレイヤーが集まり、Robuxという仮想通貨を用いて一つのエコシステムが構築されるというのが、Robloxの正体である。

 

・Robloxの示す未来

 Robloxの海外での人気は凄まじい。従来のB2Cのゲームから、C2Cの、個人のクリエイティビティがゲームにおいても価値を発揮するということをRobloxは証明した。企業がゲームというコンテンツを売り、プレイヤーがそれを楽しむという従来の形から、個人がゲームを作り、更にはそのゲームを通じた個人間のやり取りにもマネタイズ要素が入ってきている。大人気NFTゲームのアキシーもその一例だが、コンテンツが売買されるところから、ゲームをするという行為自体にもお金を生むシステムが誕生してきている。

 

 それだけでなく、Robloxにおいてプレイヤーがお金を払っている対象にも、時代の流れを示す変化が存在する。それは、ユーザーがアバターや、ゲーム内スキン、アイテムに多くのお金をかけているということだ。ApexやFortniteなど大人気のゲームもそうだが、多く大人気ゲームはプレイ自体は無料だが、バトルパスや限定スキン、エモートなどプレイヤーの「見た目」にプレイヤーがお金を払っている。

 

 昔はファミコンのマリオのような自分とゲーム機で全ての経験が完結していた時代だった。しかし最近はオンラインゲーム、PvPゲームのように必ず世界どこかの他者と繋がることが主流となり、プレイヤー側も無意識のうちにゲーム内世界における自分の見た目に気を配るようになってきている。そのため、期間限定スキンやイベント限定のスキンなどの、「見た目アイテム」が出るたびに、多くのプレイヤーがそれを手にし、ゲーム内でそれを見せびらかすことを楽しんでいる。


 事実、ダークソウルやファイナルファンタジーのようなRPGゲームでは、プレイヤーは追加のエピソードやミッションなど、追加の「経験」を購入するが、PvPゲームのようなスキンやエモートといった「見た目」を購入することは少ない。それはプレイヤー自身も他者に見られない世界でそのような見てくれにお金をかけることに価値を見出していないことを示している。

 

・Roblox vs Minecraft

 Robloxの知名度が向上していく中で度々、Minecraftと比較されることがある。それはレゴのようなブロック感あるグラフィックや、MinecraftとRobloxの両ゲームが、ユーザーの感性のままに世界を創造できる点が似ているからであろう。

 

 しかしそれでもRobloxの可能性は、Minecraftの可能性をはるかに凌駕しており、本質的にも全く異なるゲームである。それはやはり、Robloxのユーザーが、開発側のディベロッパーユーザーと、プレイするプレイヤーユーザーに分かれる点にある。そこに付け加えるならば、Minecraftの主なビジネスモデルは、有料でゲーム自体を販売する”Pay-to-play”というのに対し、Robloxは”Free-to-play”と呼ばれる、プレイ自体は無料だがゲーム内課金で収益を積み重ねるモデルを取っていることも挙げられる。

 

・おわりに

 Robloxの未来は、ゲーム業界だけでなく世の中の大きなトレンドを示しているようにも感じられる。つまり、SNSやRobloxといった個人のクリエイティビティを発信する「プラットフォーム」が拡大していく中で、消費者側も企業より自分と同じ存在である個人の発信するコンテンツを好む傾向になっていっているということだ。

 

 しかし同時に、それに気づいた企業がプロの技術を用いた、ハイクオリティなコンテンツを以て、それらのプラットフォームに参入しているのも事実である。YouTubeには芸能人やテレビ局が集まり、本記事では書ききれなかったが、Robloxで人気を集めるゲームの多くはゲーム会社やプロのディベロッパー集団といった、組織化された団体がコンテンツを作っている状況だ。

 

 未来がどうなるかはまだわからない。しかし今のRobloxをプレイしている子ども達の世代が何を好むのかを注意深く観察することは、それがRobloxのみならずこれからの社会で消費者が何を好み、どのような価値を求めるのかを判断する、一つの手掛かりになることは間違いないだろう。

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BlockRabbit『クリプト訪ねて三千里』とは。

第596話からのターン。バトンタッチを受けたcryptoトレーダーは、DeFiとは何ぞや?ユーザー目線でコツコツ嚙み砕いていくコラムを書いていきます。

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