クリプト訪ねて三千里 第1579話:Circle「Arc」はL1競争から金融ネットワーク競争へ、100社超がつくるエコシステム

CircleのArcは100社超の金融機関・Web3企業とともにMainnetを開始した。Validator、銀行、決済、DeFi、資産運用会社が同じL1に集まる構造から、Blockchainの競争軸が性能から金融ネットワークへ移る可能性を読む。

Blockchainの価値を「速さ」だけで測れなくなってきた

新しいL1が登場すると、TPS、Block Time、Gas Feeといった性能が比較されやすい。しかしCircleが9月16日にPublic Mainnetを開始したArcを見ると、競争軸そのものが変わり始めている。

Arcは100を超えるInstitutional and Ecosystem Buildersと100以上のApplicationを伴って始動した。重要なのは数ではなく構成だ。銀行、Asset Manager、Payment Network、取引所、Custodian、DeFi Protocol、Wallet、AI企業までが一つのネットワークに参加している。

Circleが構築しているのはDeveloperを集めて利用者を後から増やす従来型のL1とは少し異なる。既存金融のDistribution、Liquidity、Settlement、Custodyを担う主体を最初からNetworkへ組み込むモデルである。

Validatorと利用企業の境界が薄くなる

Founding ValidatorにはBlackRock、DTCC、Galaxy、ICE、Mastercard、MoneyGram、SBI Group、Standard Chartered、Sumitomo Corporation、Visa、Worldpayが名を連ねる。

特徴的なのは、これらの企業が単なる顧客ではなくNetwork Operationにも関与することだ。Public Blockchainでは通常、Application Builder、Asset Issuer、Validatorは別々の主体になりやすい。Arcでは金融インフラを利用する組織自身が、その基盤を支える側にも入る。

これはDecentralizationを最大化する設計とは異なる。一方で金融機関にとっては、誰がNetworkを運営し、どのGovernance Perimeterの中でSettlementが行われるかを把握しやすくなる。

CircleのJeremy AllaireはArcをUSDC以来最大の製品展開と位置付けている。Stablecoin発行企業から金融ネットワーク運営企業へ事業領域を広げようとしている点も重要だ。

DeFiと既存金融が同じ場所に集まる

ArcにはAave V4、Morpho、UniswapなどCrypto-nativeなProtocolも参加している。Mainnet開始後のDeFi TVLは約3.4億ドルで、Morpho BlueとAave V4が大半を占める。Stablecoin時価総額も6億ドルを超えており、USDCが中心となっている。

この構成はArcの性格をよく示している。銀行やPayment Companyだけの閉じた台帳ではなく、PermissionlessなCreditやDEXも同じSettlement Layer上に存在する。

オンチェーンで今後見るべきなのは単純なTransaction Countではない。Stablecoin Supply、TVL、LendingのBorrow Amount、DEX Volume、Tokenized Asset Supply、Bridge Flowを追うことで、機関投資家の名前が実際の資金移動へ変わっているかを確認できる。

Mainnet開始日のTransactionは約776万件まで増え、その後も数百万件規模の日が確認された。ただしローンチ直後の活動量には初期展開やシステム処理も含まれ得るため、継続的な利用との区別が必要だ。

日本企業は「接続する側」から「運営する側」へ

日本からはSBI GroupとSumitomo CorporationがValidatorに参加し、JCBやDigital GarageもPayment領域のBuilderとして加わっている。

これはJapan Entryを考える海外Web3企業にとっても重要な変化だ。日本企業との連携先がWalletやExchangeだけではなく、Settlement、Validator、Stablecoin Distribution、Tokenized Assetまで広がる可能性がある。

反対に日本企業も、海外BlockchainへApplicationを載せるだけでなく、Network GovernanceやInfrastructure Operationへ直接参加する選択肢を持ち始めている。

まとめ

Arcで注目すべきなのは、新しいL1が一つ増えたことではない。金融機関、決済企業、Asset Manager、DeFi Protocol、Developerを最初から同じNetworkへ配置した点にある。

Blockchainの競争が成熟するほど、性能差だけでは差別化しにくくなる。そのとき重要になるのは、誰がValidatorになり、誰がAssetを発行し、どのApplicationがLiquidityを使い、どこへSettlement Flowが集まるかだ。

Arcが長期的な金融基盤になるかはまだ決まっていない。だが「最速のChain」を競う時代から、「どの経済主体を同じNetworkへ接続できるか」を競う時代への移行を観察する材料にはなっている。