クリプト訪ねて三千里 第1569話:BitMineのETH保有が593万ETHへ、Ethereum Treasuryは金融事業になるか

BitMineのETH保有量が約593万ETHに達し、その約85%がステーキングに回った。単なる暗号資産保有ではなく、バリデータ運営と資本市場を組み合わせるEthereum Treasuryの収益構造と、日本企業への示唆を読み解く。

暗号資産を持つ企業から、ネットワークに参加する企業へ

上場企業によるDigital Asset Treasuryは、これまでBTCをバランスシートに積み上げるモデルが中心だった。Ethereumでは、その構造が少し違う。ETHは保有するだけでなく、ステーキングを通じてネットワークの検証に参加し、報酬を得られるからだ。

BitMine Immersion Technologiesは9月8日、9月7日時点のETH保有量が5,929,198 ETHに達したと発表した。同社によればEthereum供給量の4.9%に相当する。さらに重要なのは、そのうち5,067,309 ETHがステーキングされている点だ。単純計算で保有ETHの約85%になる。

ここから見えてくるのは、Treasuryを「資産を保管する場所」から「オンチェーンで収益を生む資本」へ変える試みである。

MAVANがTreasuryの内部機能を外部事業へ変える

BitMineが進めているのがMAVAN(Made in America Validator Network)だ。EthereumのProof of Stakeでは、ETHをステークしたValidatorがトランザクションの検証などを担い、その対価として報酬を受け取る。

MAVANは当初、BitMine自身のEthereum Treasuryを支えるステーキング基盤として開発されたが、現在は機関投資家、カストディアン、エコシステムパートナーにも対象を広げている。

ここがTreasury企業として興味深い。大量のETHを保有するために必要だった運用インフラを構築し、それを外部向けサービスへ展開できれば、「ETH価格へのエクスポージャー」だけではない収益源を持てる可能性が生まれる。

BitMineは直近の5,067,309 ETHのステーキングについて、7日間の年率換算利回り2.61%を前提に、年間約3.3億ドルのステーキング収益を見込むとしている。ただし利回りは固定ではなく、ネットワーク参加状況や報酬条件などで変動する点には注意が必要だ。

見るべき指標はETH保有量だけではない

Ethereum Treasuryを評価するとき、保有ETHの増減だけを見ると構造を見誤る。

一つは「Staked ETH / Total ETH」。どれだけのTreasury資産がネットワーク収益を生む状態にあるかを見る指標になる。BitMineの場合、現状は約85%だ。

次に重要なのがETH per shareである。企業が株式発行などを利用してETHを増やしても、株式数がそれ以上に増えれば既存株主から見たETHエクスポージャーは必ずしも増えない。BitMine自身もETH per shareの最大化をTreasury戦略の中心に掲げている。

さらにステーキング報酬、運営コスト、資本調達コストを組み合わせて見る必要がある。つまりEthereum Treasuryは、保有量ランキングではなく、資本市場とオンチェーン運用を接続するAsset-Liability Managementに近づいている。

日本企業にも「保有+運用」という論点が出てくる

日本でも企業による暗号資産保有は珍しいテーマではなくなった。しかしETHをTreasury Assetとして扱う場合、BTC型の単純保有とは異なる検討が必要になる。

ステーキングを行えば、カストディ、Validator運用、スラッシングなどの技術リスクに加え、会計・税務・内部統制上の論点も増える。一方、自社でインフラを構築できる企業にとっては、Treasury運用とWeb3事業を接続できる余地もある。

BitMineのモデルが日本企業にそのまま適用できるわけではない。重要なのは、Ethereumを企業財務に組み込む議論が「何ETH持つか」から「そのETHをどのように生産的資本として管理するか」へ進んでいることだ。

まとめ

BitMineの約593万ETHという規模は目を引くが、より重要なのは500万ETH超をステーキングし、MAVANというValidator基盤まで構築している点にある。

Ethereum Treasuryでは、資産保有、ステーキング収益、Validatorインフラ、株式市場での資本調達が一つの循環を形成し得る。その一方で、ETH価格、ステーキング利回り、希薄化、運用リスクを同時に管理する必要がある。

上場企業の暗号資産戦略を見る際も、これからは保有額だけでなく「オンチェーン資産をどれだけ効率的に運用できているか」が重要な観測点になりそうだ。