AaveのMonad市場はTVLで全展開先の5位ながら、週間手数料では3位に浮上した。預入資産の大きさだけでは測れないDeFiの利用実態を、借入需要、Utilization、手数料、Stablecoinの資金移動から読み解く。
預けられた資金の大きさだけでは利用実態が見えない
DeFiでは長くTVL(Total Value Locked)がプロトコルやチェーンの規模を測る代表指標として使われてきた。しかしレンディング市場では、資金が大量に預けられていても借り手がいなければ金融活動は限定的だ。逆にTVLが小さくても、資金が頻繁に貸し出され、金利や手数料を生んでいれば経済活動は活発といえる。
その違いを示す例がAaveのMonad市場だ。Aaveは7月2日にMonadへ展開。46日経過時点で市場規模は約3.21億ドルとなり、Aaveの21展開先の中でTVLは5位だった一方、週間Feesでは3位に入った。
足元のデータでもMonad市場のTVLは約3億ドル規模で、Ethereum、Base、Arbitrum、Plasmaに続く位置にある。直近7日間のFeesは約26.7万ドルで、Ethereum、Plasmaに次ぐ規模となっている。
Utilizationが映す「働いている資本」
レンディングで重要なのがUtilization、つまり供給された資産のうち何割が借りられているかという指標だ。預入額だけでなく、実際のCredit Demandを見るために使える。
MonadではStablecoinの借入需要が強まり、USDCやUSDT0が最適Utilizationを上回る局面も発生した。AaveのRisk Service ProviderであるTokenLogicは、借入需要が供給側を上回ったことを理由にStablecoinのInterest Rate Model調整を提案している。
背景にはsyrupUSDC、USDe、Pendle系資産などを組み合わせたLeveraged Strategyがある。つまり資金は単にAaveへ置かれているのではなく、担保化、借入、再配置という形で複数のDeFi市場を循環している。
ここではTVLより、Borrowed Amount、Utilization、Fees、Supply Rateを組み合わせた方が市場の実態を捉えやすい。
高い利用率は必ずしも良いことではない
資本効率が高いほど優れた市場とは限らない。Utilizationが過度に上昇すると、貸し手が資金を引き出すためのLiquidityが減り、Borrow Rateも急上昇する。
実際、MonadのUSDT0では大口供給者の退出などにより、供給量が8月中旬の約1.67億ドルから約5,700万ドルまで減少した局面が確認されている。Aave側は金利曲線を調整し、供給者へのOrganic Yieldを高めることで需給バランスを改善しようとしている。
一方、USDeでは金利条件の変更後にDebtが大きく減少した。Monad市場のUSDe Debtは8月28日の約3,600万ドルから約640万ドルまで縮小し、Utilizationも30%から6.6%へ低下した。金利パラメータの変更が借り手の行動を直接変える好例だ。
新興チェーンを見る指標も変わる
新しいL1やL2を評価するとき、TVLランキングだけを見るとインセンティブによって集められた待機資金を実需と誤認する可能性がある。
見るべきなのは、TVLに加えてActive Loans、Utilization、Fees、Stablecoin Supply、DEX Volume、Liquidationなどだ。特にFeesをTVLと比較すると、同じ資本がどれだけ金融活動を生んでいるかを把握しやすい。
日本のDeFi事業者や金融機関にとっても、この考え方は重要になる。オンチェーン市場を評価する際、預かり資産の総額だけでなく、その資産がどの程度貸し出され、取引され、収益を生み、どのリスクパラメータによって制御されているかを見る必要がある。
まとめ
AaveのMonad市場が示しているのは、DeFiの規模と活動量は必ずしも一致しないということだ。約3億ドル規模の市場でも、借入需要が強ければ大きな手数料を生み出せる。
同時に、高いUtilizationはLiquidity Riskと表裏一体である。だからこそTVL単独ではなく、Borrowing、Fees、Utilization、金利変更後の資金移動を継続的に追う必要がある。
DeFiが成熟するほど重要になるのは「いくら集めたか」だけではない。「集めた資本がどれだけ使われ、どのようなリスクを取りながら経済活動を生んでいるか」という視点である。







